恒例の吉野山お花見
ここ10年ほど断続的に、
時期は大体4月の上旬。
吉野山の桜は山桜で、
※ 吉野駅のホームにある案内板
吉野山は、古い時代の寺社仏閣が山中に点在しており、その多くを徒歩で回ることができる。2007年には山全体が世界遺産に登録されている。
吉野山までの道のり
今年吉野山に行ったのは4月9日から10日にかけてで、
奈良市内から吉野山へは近鉄特急で一時間ほど。
今回は少し寄り道したので、16時過ぎに奈良を出て、
日帰りでお花見に来た観光客が帰宅する時間帯で、
駅前には他にもお店がたくさん出ているけれど、
吉野山の中に泊まる
定宿は、七曲坂の上にある「歌藤」さん。
部屋の窓から見えるしだれ桜。吉野山に泊まると窓の外の風景がとても美しいのがよいところ。
もう一つ、夕暮れ時の山の風景がとても美しい。
チェックインして荷物を置いてから、
だんだんと日が暮れていく。
懐古堂のぽち袋
参道を上っていき、「銅の鳥居」の先、右側にある懐古堂。吉野山の名産品の一つである和紙製品を扱うお店で、懐紙やぽち袋などを置いている。
可愛くてお手頃なので、よくおみやげに買って帰る。
ひょうたろうの柿の葉寿司
その手前の左側にあるひょうたろうは、柿の葉寿司のお店。吉野山に柿の葉寿司のお店はたくさんあるけれど、ここが一番人気があって、桜の時期は結構な行列ができている。いろいろ食べたけれど、わたしもここのが一番好き。鯖の脂がのっているのと寿司飯がまろやかなところが美味しいのだと思う。
柿の葉寿司とは、しめ鯖や鮭を酢飯と合わせた押し寿司を柿の葉で包んだもの。柿の葉の殺菌作用で常温の持ち歩きができるので、こちらもうまく買えればおみやげにべんり。
すっかり日が落ちると、七曲坂の桜はライトアップされる。あまり洗練されていないけれど、その雰囲気がまた結構好きである。
宿の夕飯は山の幸づくし。歌藤さんはご飯がとてもおいしい上に結構な量が出るので、十分に楽しむためには間食をしすぎないよう注意する必要がある。
こちらはジビエ。鹿肉とのこと。臭みがほとんどなく美味しかった。
朝の吉野山
朝は6時起床。寝ぼけたまま露天風呂に入り、目が覚めるにつれお腹が空いてくる。昨夜満腹まで食べたはずなのに…。歌藤さんは朝ごはんも充実していて、山菜入りの茶粥が特においしかった。
宿を出たのは、7時半すぎ。桜シーズンの吉野山はとにかく混雑するので、できるだけ朝は早いほうがいい。また、吉野山は遭難するような山ではないけれど、上千本まで行くのであればちょっとしたハイキングにはなる。たまにヒール靴で苦しそうに歩いている人を見かけるけれど、せめてスニーカーくらいは履いてくることをお勧めする。
歴史を感じさせる黒門
ロープウェイの駅の前を通って参道を進むと、黒門に差し掛かる。古くて立派な門だ。道はゆるやかな上り坂で運動不足の体にはすでにちょっと堪える。
渋い色合いの銅の鳥居
更に進むと「銅の鳥居」。
参道の両側にはお店が立ち並んで賑やかだけれど、まだ先は長いのであまりゆっくり眺めている時間はない。
金峰山寺の仁王門は修繕中
金峯山寺の国宝仁王門は長らく修繕中でネットに覆われて、全景を見ることができないのが残念。
萬松堂の草餅とさくら羊羹
仁王門から見下ろす参道。早朝からすでに賑わっている。時間が経つと渋滞することもある。右下に見える萬松堂は和菓子の名店で、特に草餅が絶品なので、絶対に買ったほうがよい。他に桜餅や桜羊羹もお勧め。
持っていく分は別に注文して、とりあえず一個食べる。餅は柔らかくよもぎの香りが高い。あんこは甘さ控えめで、何個でも食べられるおいしさ。
おみやげにするなら、上の層が桜、下の層が抹茶になっている「さくら羊羹」もお勧め。家に帰ったあとのお茶の時間が楽しみになるし、美しいので人にあげても喜ばれます。
奥千本行きのバスに乗る
参道の両脇には寺社仏閣や土産物屋などがまだまだ並んでいるけれど、朝はいつも萬松堂の和菓子だけを買って、あとは一目散に竹林院のあたりまで上る。早足で20分くらい。理由は、竹林院付近から出て奥千本の入口付近まで行くバスがものすごく並ぶから。
臨時のバスのりばで、30分ほど待ったところ。今年は8時過ぎにバスのりばに到着したら、40分待ちだった。もちろん奥千本の入り口まで歩いて上ることもできるけれど、バスは乗ってから13分で着くところ、徒歩だと上り坂を1時間ちょっと歩くことになるので、体力と相談して決めてほしい。
急坂の上の金峰神社
バスに乗ると、金峯神社の修行門の前あたりに到着する。ここから、写真左前方に見えるまさに修行としかいいようがない急坂をふうふう上っていくと、金峰神社がある。
金峰神社。吉野山の地主神である金山毘古命が祭神であり、朽ちかけてなお格調の高い社に大きな桜が咲き誇る様は、言葉にならないほど美しい。社の向こう側に見える石階段は上が覗き込めないようになっていて、祭神がその先に佇んでいるのではないかという気にもなってくる。
ここからさらに30分ほど山道をのぼると西行庵があり、その周辺が奥千本になる。奥千本の桜は高いところにあるせいで開花時期が遅いので、今年はまだ咲いていないと見て上らなかった。ただ、もし開花時期であれば、行ってみることをお勧めしたい。足元の少し危ない山道をもくもくと上ることになるけれど、奥千本の桜は格別なのである。
奥千本を諦めた場合、今度は上千本を目指して山道を20分ほど下っていくことになる。周囲は見上げるような吉野杉の森。花粉症の人は苦しい気持ちになるかもしれない。
手を合わせつつ進む。
水と子宝の神様 吉野水分神社
やがて吉野水分神社の掠れた赤い鳥居が見えてくる。
吉野水分神社は「よしのみくまりじんじゃ」と読む。水を司る天之水分大神が主神であり、別名は子守宮で、水と子宝の神様ということらしい。
境内に入ると古くてとても大きな桜が腕を伸ばすように咲いていて、その迫力に圧倒される。
桃山時代のものだという建築は朽ちかけてなお美しく、不思議な威厳をたたえている。
子宝の神様なので、出産を控えている友人のためにお守りを一つ買う。いつもここが一番去りがたい。何度でも訪れたい美しい場所。
上千本でピクニック
吉野水分神社を越えると、上千本に差し掛かる。曲がりくねった山道沿いにたくさんの山桜が植えられている。
桜に侵食される山々。
新緑と桜の桃色がお互いを引き立てあっているよう。
山肌の一角の、均されて平らになっている部分にシートを敷いて、早めのお昼ごはんにする。周囲には持参のお弁当などを広げている人たちがたくさんいる。
わたしたちの定番は、お酒と乾き物と甘いもの。今回は、缶のカクテルとパン、チーズ、魚の缶詰、ホワイトチョコレートがけのマンゴーを用意した。桜を眺め、他愛無い話で盛り上がりながら、少しだけ酔っ払う。
食後には萬松堂で買ったばかりの草餅と桜餅。これを食べずに山を下ることはできない。
「花錦」のわらび餅
さらに食べ物の話で恐縮だが、上千本の桜を眺めながらしばらく山を下って行くと、竹林院の手前の右側に花錦というお茶屋さんがある。見た目は縁側のある民家だけれど、のれんが出ているのですぐに分かる。毎年ここで休憩をすることにしている。tabelog.com
中のお座敷で頂く自家製のくず餅。金柑の蜜煮がついてくる。ひとりずつ御膳に乗ってくる道具立てもすてき。他にくずきりや葛湯などもある。
休憩ついでにおみやげも買う。自家製の桜花漬は桜茶にしてもいいし、炊き込みご飯に入れてもいいらしい。購入すると口頭で簡単なレシピを教えてくれる。
もう一つ、必ず買うのは自家製のごま豆腐。常温で2ヶ月くらいは保存できるので、持ち帰るのも家で使うのもらく。食べる直前に冷やしてわさびを添えると酒のツマミになります。
竹林院
一服した後、更に山道を下る。カーブのあたりに大ぶりの八重桜が咲いている。
朝にバスに乗った場所の近くまで降りてきたところ。
横道と合流した先にあるのは、竹林院。聖徳太子が創建したと言われ、奥には庭園がある(拝観料300円)。この庭園を見るかどうかは時間との相談で。わたしはいつも時間が足りず、まだ一度も見たことがない…。また、竹林院は僧坊が併設されており、宿泊ができるとのこと。調度品などが素敵そうなので機会があれば宿泊してみたい。
櫻本坊
竹林院から更に参道を下り、右側に見えてくるのが櫻本坊。天武天皇が創建したとされている寺院である。拝観料がなく境内を見られるので、時間が押していてもささっと立ち寄りやすい。
入って左側の建物。欄間の細工が素晴らしく美しく迫力があり、ため息もの。
縁結びの神様である聖天が祀られた祠。聖天とはインド神話でいうところのガネーシャ神のこと。
水本米穀店のよもぎみたらし
櫻本坊を出たあたりにある、水本米穀店にて、炭火焼きの団子を一つ。
吉野山のみたらし団子はベースがよもぎ餅になっていて、美味しい。
この先しばらくは細く曲がりくねった急坂が続く。道の両側には味わいのある一角がそこここに。明日筋肉痛がやってくる予感がする。
「昔ながらのおばあちゃんの手作りかきもち」は色合いが素敵。素材の色を活かして、着色料は使っていないとのこと(確か赤い方は桜えび)。
林とうふ店のこんにゃく
左側に見えてくるのは、林とうふ店。
豆乳ドーナツや味噌田楽などのすぐ食べられるもののほか、豆腐やこんにゃくなども売っている。
このざっくりしたこんにゃくが美味しそうで、一度買って、東京まで持って帰ったことがある。水漏れしないかヒヤヒヤしたけど、美味しかった。
おしゃれカフェのツジムラ
坂のつきあたりにできていたおしゃれなカフェ。「ツジムラ」というらしい。吉野的にはありえないくらいおしゃれな雰囲気なので、来年はぜひ立ち寄りたい。
勝手神社は再建中
その向かいにある勝手神社は、残念ながら火災で消失してしまい、現在は再建中とのこと。
北岡本店の清酒「やたがらす」
さらに進むと北岡本店という酒造があり、清酒やたがらす等を販売している。その場で枡酒を飲むこともできるし、おみやげに買って帰ることもできる。さらっとさっぱりして飲みやすいお酒。
枳殻屋の天女魚(あまご)寿司
そのすぐ先、左側に枳殻屋がある。川魚を扱うお店で、吉野で採れる「天女魚(あまご)」を押し寿司にしたものを売っているので、これも毎年必ず買う。
プレーンなものと柚子味のもの。他に鮎の押し寿司などもある。
パッケージを開くとお寿司は竹の皮に包まれている。帰りの電車の中で遅いお昼として食べるのが定番。これを食べるともう旅も終わりだなとちょっと寂しい気持ちになってしまう。
ガマガエルの陀羅尼助丸
一度も買ったことがないけれど、毎回気になるのが陀羅尼助丸。胃腸の不調に効く漢方薬で、蛙を煎じたものが入っていそうだけれど、実際は蛙は入っていないらしい。
吉水神社と中千本の桜
右側の鳥居の先を降りて行くと、吉水神社がある。
源義経と静御前、弁慶が逃れて隠れ住んだ神社として有名で、建物自体は修復中のためネットなどに覆われているが、中には縁の品々が展示されており、見応えがある。
吉水神社に行く途中の道に、中千本の桜を見ることのできる小高い丘がある。中千本の桜は上千本や下千本とまた違う味があるので、うまく時間が取れればぜひ見てほしい。
葛菓子の定番は八十吉
参道に戻り、少し下った右側にある葛菓子のお店「八十吉」。一つずつ和紙に包まれた吉野葛の葛菓子が美しくおいしいので、女性向けのおみやげによい。
東南院の赤い塔
そのちょうど向かいには東南院があり、 特に赤と白のコントラストが印象的な多宝塔が素敵。
芳魂庵でくず花とお抹茶
さらに下った右側には、芳魂庵という甘味処があり、中に入ると裏側のテラスから山(多分中千本のあたり)を一望できる。
お抹茶とくず花のセット。くず花というのは、葛の水菓子でつぶあんを包んだお菓子で、素朴な美味しさがあって美味しい。
大和本舗の「こんにゃくの中にやまくらげ」とお漬物
他におみやげと言えば、大和本舗の漬け物。すごい人だかりなのですぐわかる。店頭でちりめん山椒を販売している。友人は「こんにゃくの中に山くらげ」という漬け物が絶品だといい、毎年山ほど買っている。漬け物好きの方はぜひ。
中千本から下千本にかけての参道は、他にも紹介しきれないほどいろいろな出店がある。見ているだけでも楽しいので、ぜひ自分の気に入るお店を探してほしい。
金峰山寺蔵王堂と蔵王堂権現
ひとしきりお土産物屋を見た後は、金峰山寺蔵王堂へ。荘厳な寺院建築に鮮やかな色合いの垂れ幕がよく映える。境内の桜も美しい。
大量のお線香。桜のシーズンはいつ行っても混んでいるけれど、少々待っても見る価値がある。
屋根の裏側の細工も非常に細くて見応えがある。
色鮮やかな旗が風にはためく。特別拝観料1000円を支払うと、金剛蔵王大権現を拝観することができる。中は撮影禁止で写真がないので、詳しくはこちらを見てほしい。
中で少し順番待ちをすれば、障子で仕切られた小部屋の中で一人、蔵王堂権現と向き合う時間を取ることができる。蔵王堂権現の荘厳さと相まって、なんとも言えない体験になる。他の展示物もどれも興味深いが、個人的には繊細な彫刻が施された仏足石は何度見ても見飽きない。
今年訪れたときは、ちょうど餅つきをしていた。山伏の服装がかっこいい。
下千本と七曲り坂
金峰山寺蔵王堂の先は少しだけ土産物屋が続いた後、ロープウェイの駅がある。ロープウェイに乗ってショートカットするのもよいが、下千本は下るほうが楽ちんなので、ゆるゆる歩いて降りることをおすすめしたい。近鉄吉野駅まで30分あれば余裕である。
下千本というだけあって、無数の山桜が咲き乱れている。
旅の終わりを惜しむように、曲がりくねった道をゆっくりゆっくり下っていく。
桜だけではなく、新緑のみずみずしい木々も美しい。
山の間を通る道路さえ風情がある。
山桜と木々の緑。吉野山の美しさはそのコントラストだと思う。
四手掛桜と幣掛神社
七曲坂の終わり、ロープウェイ駅の脇に繋がる道の手前にこんな道標がある。時間に余裕があれば、この道標にしたがって寄り道してみてほしい。
役行者が祀られている小さな神社。手前には湧き水がある。
四手掛桜とはこの鳥居にかかるように咲いている桜のこと。一つの桜の木に一重と八重の桜が混じって咲く珍しい品種とのこと。確かに他の桜とは少し違う佇まいがある。
すぐ横にある幣掛地蔵尊にも不思議な風情がある。
旅の終わり
幣掛神社から急坂を降りるとロープウェイの駅があり、そこから近鉄吉野駅までは徒歩数分。
ここが旅の終わりになる。沢山の人が待つホームに列車が滑り込んでくる。名残惜しいけれど、東京に帰らなくては。
また来年も行けるといいな。
これまでの旅の記録
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