じゃがいものバター煮とは
じゃがいものバター煮をご存知ですか。
札幌にある味百仙という居酒屋の名物なのですが、漫画「美味しんぼ」67巻にて、嫌いな人でもおいしく食べられるじゃがいも料理として登場しています。
#67 第2話「じゃがいも嫌い!!」参照
紹介されているレシピによると、バター入りのだし汁の中でじゃがいもを4時間ほど煮込んだ料理とのこと。それなら、Anovaを使って作れる可能性がある!とひらめき、試してみることにしました。
じゃがいもの最適な加熱温度について
さて、じゃがいもです。Anovaによる低温調理で野菜を扱うのは初めて。じゃがいもを煮崩れさせず、かつ、芯まで柔らかくなるよう火を通すには、どのように加熱するのが適切なのでしょうか。
ヒント1 水から茹でる
この記事によると、じゃがいもの煮崩れを防ぐためには、水から茹でるとよいとあります。
水からゆでると、ジャガイモの表面温度はゆっくり上がります。中心部分にも表面からの熱がじわじわ伝わるので、表面部分と中心付近の温度差は湯からゆでたときよりも小さくなります。つまり、中心も表面も同じように加熱されていくので、表面が崩れることなく、全体がホクホクとおいしくゆで上がるのです。
Anovaを使う場合、加熱温度に達した湯の中に素材を入れることが多いのですが、じゃがいもは、常温から調理を始めて、加熱温度まで徐々に水温を上昇させるのがよさそうです。
ヒント2 低温で長時間加熱しすぎない
一方、別の記事によると、じゃがいもの加熱について、
50~80度、特に60度付近を通過するときに、ジャガイモが硬くなる現象が起きるのでその後に80度以上で長く加熱してもペクチンが分解されにくく煮崩れしにくいんです。
ただ50~80度の時間があまりに長いと、そのあといくら加熱してもやわらかくなりません。たとえば60度付近を2時間保つと生の状態よりも硬くなることもあります。
ヒント3 野菜を柔らかくするには、90度以上必要
野菜を加熱すると、軟化と同時に硬化が起こる。・硬化は50-80℃、特に60-70 ℃・軟化は80℃以上、野菜の軟化には90℃以上必要
じゃがいものバター煮の作り方
材料です。美味しんぼでは男爵?を使っているように見えるのですが、元ネタの味百仙の写真ではメークインの特徴があるので、メークインを用意しました。予め皮を剥いて水に晒しておきます。あとは、スープ用のかつおだしと無塩バター(有塩が手元になかったため)です。
作中では「じゃがいも10個に対して、有塩バターをたっぷり半ポンド入れ」とあるのですが、かつおだしに対する割合は明記されていません。今回は、「たっぷり」という語感から、かつおだし300ccに、無塩バター100gを入れてみました。味付けは、ゲランドの塩小さじ1/2弱と醤油小さじ1/2弱です。
じゃがいもとスープをジップロックに入れ、いつもの手順でできるかぎり密閉します。
加熱です。冒頭で検討したとおり、常温から始めて徐々に加熱します。加熱温度は、野菜を柔らかくするために必要な90度(なお、ジップロックの耐熱温度は100度です。)。時間は美味しんぼのレシピに従って4時間です。
具体的には、常温の水を張った鍋にじゃがいもの入ったジップロックを入れ、Anovaでゆっくり90度まで温度を上昇させ、水温が安定してから4時間加熱します。
高温な分、水分の蒸発が激しいので水量不足に注意が必要です。スープは途中で分離しますが、かき混ぜれば戻るので心配ありません。
なお、当初は余裕をもって95度に設定してみたのですが、煮崩れする気配を感じたので90度に落としました。結論としては、初めから90度でよいと思います。
できあがり
できあがりです。かなり柔らかいので、トングなどで慎重に取り出し、鉢に盛り付けてスープを張ります。バターとかつおだしが混ざり合って、とてもよい匂いがします。
じゃがいもの加熱具合ですが、煮崩れてはいないのに、スプーンを入れると簡単にほぐれました。すなわち、中心部までしっかり火が入って柔らかくなっていました。「煮崩れさせず、かつ、芯まで柔らかくなるよう火を通す」という目標は達成できていると思います。食感は、ほくほくというよりは、さらっとしています。これも作中で記載されているとおり。
感想としては、今までにない食感とか、初めての味というよりは、酒の肴にぴったりなちょっとジャンクなじゃがいもでした。一番の特徴は、食欲をそそる匂いかもしれません。
特別な料理を期待すると肩透かしを食うかもしれませんが、Anovaがあれば割と手軽にできるので、理科の実験だと思って過程も楽しみながら作ることをお勧めします。
また、じゃがいもを煮崩れさせずに芯まで柔らかくする加熱方法として、(加熱時間を短くした上で)他の料理にも応用できそうです。
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