2017年12月に読んだマンガ作品の紹介と感想です。
1. 此元和津成『セトウツミ(1)〜(8)』
関西に暮らす男子高校生の「瀬戸」と「内海」が、放課後の手持ち無沙汰な時間を潰すために、まったりと川べりでしゃべっている、ただそれだけの漫画なのに、巻を追うごとに切れ味を増す二人の会話は、まるで良質な漫才を見ているようなセンスのよさで、それだけでも十分におもしろい。
時折垣間見える将来への不安やそれぞれの抱える家庭の事情は、川べりで埒もない会話に興じられる時間がいつまでも続かないことを暗示して切ない気持ちを呼び起こす。最終8巻では、丁寧に積み上げられた伏線が鮮やかに回収されて、なんとも言えない余韻を残す幕切れが訪れる。とてもよかった。
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2. 竹良実『辺獄のシュヴェスタ(1)〜(6)』
16世紀のローマ帝国を舞台に、育ての母を魔女狩りで奪われ、自らも「魔女の娘」として女子修道院にて矯正教育を受けることになった少女エラをめぐる物語。
魔女狩りの時代がテーマとあって、特に1巻はリアルな残虐描写が多めなので、苦手な人は読むこと自体が辛いかもしれない。全体を通して過酷な物語ながら、どこまでも強く理性的な主人公エラに強く惹きつけられる。
「魔女の娘」を集めた女子修道院が作られた真の理由、修道院を統べるエーデルガルド総長の目的と信じる正義、そしてエラの選択。最後は少し駆け足となってしまった感があるが、エピローグにて初めて題名の意味が明かされる展開も含め、物語として非常に面白く読み応えがあった。
3. 松田洋子『大人スキップ(1)(2)』
中学二年生、14歳で交通事故に遭って植物状態に陥った希子は、10年以上眠り続け、目が覚めたときには40歳になっていた。心は14歳なのに、社会では40歳の大人として振る舞うことを求められて戸惑う希子の前に、謎の女性「くろけー」が現れ、二人は不可思議な同居生活を始めることになる。
大人になりきれない、いわゆるダメな大人たちの姿がシビアに、しかし愛すべき存在として描かれる物語は、松田洋子の真骨頂。14歳の少女が突然40歳の大人としての社会的ふるまいを求められる不条理は、やがて大人になりきれないまま不器用に傷つきながら生きていく人たちの姿に重なっていく。
右往左往の後にいくつもの失敗を重ね、ついにくろけーに愛想を尽かされてしまう希子。ハラハラと読み進む読者の前には、まさかの結末が示される。こんなハッピーエンドが待っているならば、この世界もまだ捨てたものではないと思わされた一作。
4. 四谷啓太郎『悪魔のメムメムちゃん(4)』
下宿生活を送る平凡な高校生ひょうたの前に現れた、ポンコツ悪魔メムメムちゃんと愉快な仲間たちを巡るギャグ漫画の第4巻。ひょうたの下宿先のセクシーな大家さん、可愛い同級生、悪魔狩りの少女オルルに加え、ランプの魔人やサキュバスなのに男の子のチュチュ、ドS風の外見で実は面倒見のよいメムメムちゃんの上司レース@六淫将など、脇を固めるキャラクターも生き生きと活躍し、ギャグの切れ味もますます冴えて、どんどん面白くなっていると思う。今一番お勧めしたいギャグ漫画!
5. 小林銅蟲『めしにしましょう(4)』
売れっ子漫画家の仕事場を舞台に、敏腕アシスタントの青梅川おめがとゆかいな仲間たちが締め切りをぶっちり切りながら " やりすぎ飯 " を作って食べまくるという漫画の第4巻。わたしはこのマンガをいわゆるグルメ漫画カテゴリではなく、料理をネタにした不条理漫画として読んでいるのですが、そういう意味では、当初は抑えめだった作者の独特の世界観が少しずつ浸食してきて、不条理テイストが強くなりつつ、メインテーマが料理なので読みやすさも保たれているという奇跡のバランスが成立して、巻が進むごとに面白くなっていると感じています。
なお、4巻は巻末に『悪魔のメムメムちゃん』がゲスト出演しているおまけマンガというボーナストラックもついていてかなりよい。青梅川さんが普通にかわいくて一瞬誰だかわかりません。
6. 三部けい『夢で見たあの子のために(1)』
「僕だけがいない街」の三部けいの新作は、幼少期に家族を惨殺された少年を主人公とするサスペンス。第一巻はまだ導入部ながら、前作同様に登場人物が魅力的かつ興味を惹かれる伏線が張り巡らされているのが分かり、期待が高まる一作。
7. 三月薫『百年のワルキューレ(2)』
異世界を舞台に、100年に一度現れる『剣乙女(ワルキューレ)』と呼ばれる少女とそのもたらす神剣を巡り、革命を起こした奔放な英雄と国を追われた生真面目な若い王子の運命が交錯するファンタジー。
美しい絵柄、甘すぎない展開と昨今の作品に多い残虐な描写も控えめで、『Landreaall』的な雰囲気の長編になるのではと期待していたのですが、残念ながら2巻で完結。駆け足ながら、予め決められていたと思しき結末にきれいに落とし込まれており、物語としては充分に面白く仕上がっていました。次回作も楽しみ。
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8. 諌山創『進撃の巨人(24)』
『進撃の巨人』は、巨人と世界の謎、そしてタイトルの意味が明かされたところで終わると予想していたのですが、それは見事に裏切られて、世界の謎が明かされた後も物語は続いていく。それは決して蛇足ではなく、むしろようやく本編が始まったという感覚すら覚える。
登場人物の世代交代が行われたように見せかけて、成長した主要登場人物が一人また一人と登場する演出もうれしい。個人的には、ハンジ・ゾエのファンなので、次巻でついに再登場するのではという期待が高まっている。元気にしていてほしい。
9. 亜峠呼世晴『鬼滅の刃(9)』
大正時代を舞台に「鬼」に家族を殺された少年・炭次郎が、鬼に変貌した妹の禰豆子を人間に戻す方法を探して旅する物語。
9巻は遊郭に潜入する話で、表紙にもなっている柱の一人「天元」が活躍する。前巻で活躍した柱の煉獄杏寿郎とはまた違った魅力が余すことなく描かれ、この作者は本当にキャラ造形がうまいと感じる。相変わらずとてもおもしろい。
10. 咲坂伊緒『思い、思われ、ふり、ふられ(6)(7)』
高校生男女4人のすれちがう恋愛模様を描くラブストーリー。主要登場人物は4人、テーマは「恋愛とそれに絡めた人間的成長」とごくシンプルながら、ディテールが丁寧で嫌味がなく大人でも楽しめる。7巻まで読んでふりかえると、正にタイトルの通りとしか言いようがない展開で、きちんと計算された物語であることが分かるしくみになっている。
11. ユペチカ『サトコとナダ(2)』
アメリカに留学した日本人サトコのルームメイトは、サウジアラビア国籍で厳格なイスラム教徒の少女ナダだった。そんな二人の文化を超えたコニュニケーションと友情を描いた物語。
2巻も失速することなく、二人の恋と友情がコミカルに描かれる。作者の視点が非常にフラットで、イスラムという日本にはなじみの薄い文化圏の事柄を注意深く丁寧に扱う姿勢が、物語の読みやすさや心地よさにつながっているように感じる。
12. 佐竹幸典『魔女と野獣(2)』
邪悪な「魔女」とそれを狩る「野獣」の物語。グロテスクな表現のあるダークファンタジー。とにかく絵が上手で戦闘シーンの迫力がよい。二巻では、魔女が絡む新たな事件が語られるのですが、新しい登場人物のキャラと関係性がうまくて、一巻よりもさらに面白かった。
13. 栗山ミヅキ『保安官エヴァンスの嘘(1)(2)』
西部劇っぽい世界観を舞台に、無敵のガンマンである一見クールな保安官エヴァンスがモテたいという下心がありつつ、絶妙なタイミングの悪さでモテない(モテる場合もあるけれどうまくいかない)状況を淡々とつづるコメディ。
エヴァンスが気になりつつ、こちらも絶妙なタイミングンの悪さでうまくいかない賞金稼ぎの娘オークレイも可愛くて、安定感のある娯楽作。
14. コトヤマ『だがしかし(9)』
片田舎にあるさびれた駄菓子屋を父とともに経営するココノツの前に、ある日現れた駄菓子を愛する美少女ほたる。毎回ひとつの駄菓子を取り上げて、それにまつわる物語が展開される、いわゆる日常ものなのですが、キャラ設定のうまさ、優しく甘酸っぱい恋愛描写、そして仄めかされる「無邪気で平和な子どもの時間はいつか終わりを迎える」という少し切ないテーマに引き込まれてしまう。
ほたるちゃんもサヤ師も可愛いですが、個人的にはちょっとダメな大人の魅力でハジメさん推し。
15. 勝木光『ベイビーステップ(47)』
テニスに興味のない人でも面白く読めるテニス漫画の傑作。プロ編に入り、ようやく本格化し始めたところで、まさかの完結。いろいろ事情があるようですが、主人公のエーちゃんがヴィンブルドンで戦うところまで見たかった。しかし、ここまででも十分面白いと思うので、スポーツ漫画が好きな人はもちろんあまり得意ではない人にもぜひおすすめしたい一作。
16. 三宅乱丈『イムリ(22)』
三宅乱丈の最新作。超能力を操る「カーマ」、「イムリ」、「イコル」の三つの民族がそれぞれの支配と権力をめぐり血で血を洗う紛争を繰り返してきた異世界の星ルーンを舞台に、カーマに生まれた心優しい少年デュルクは、三つの民族の争いに終止符を打つ運命に導かれ、翻弄させていくという壮大なSFファンタジーの22巻。
カーマ、イムリ、イコルの三つ巴の争いは、消耗戦を経て最終局面を迎える。それでも権力欲に取り憑かれた昏い心は醜くしぶとく、幾重にも張り巡らされた権謀術数が渦巻く中、一筋の希望が提示される。
クライマックスに進んでいく感覚があり、結末を知りたい欲と終わってしまう寂しさが同居する気持ち。完結した後に、この壮大な物語を一気に読み直すことが楽しみでもある。
17. 板垣巴留『BEASTERS(5)(6)』
肉食動物と草食動物(をそれぞれ擬人化したキャラクター)が同じ街で暮らす世界で、全寮制のエリート学校に通うハイイロオオカミの少年レゴシは、ただ一人園芸部で植物を愛でるドワーフ種ウサギのハルに出会い恋に落ちる。本来は捕食関係にあるはずの二人は、喰う者と喰われる者が共存するいびつな世界の中で大きく揺れながらも、少しずつ近づいていく。
動物を擬人化したキャラクターは、それぞれの性格造形に一癖二癖あり、展開も予想を裏切るもので飽きさせない。「ビースター」と呼ばれる学園のナンバーワンに選ばれるのは一体誰なのか。その筆頭と目されたアカシカのルイは一体どこへいくのか。
18. 押見修造『血の轍(2)』
美しく献身的な母静子の狂気を孕んだ執着に徐々に絡め取られていき、自我を崩壊させていく息子静一。人の心の暗闇ほど恐ろしいものはない。大げさな表現はなく淡々と話が進む物語は、赤裸々な残虐表現よりもずっと怖ろしい。押見修造の本領がいかんなく発揮された第二巻。
19. ひかわきょうこ『魔法にかかった新学期(1)』
ひかわきょうこ先生の新作は、 現代を舞台にした学園もの × 超能力ファンタジー。高校生の琴美は転校先の学校で、教師になった幼馴染と再会する。時を同じくして、不思議な埴輪とともに、学校に妖魔が現れて……という登場人物紹介と導入で一巻は終了。12年ぶりの完全新作とのことですが、テイストは昔から変わらず。今風の絵柄ではないものの、画力は非常に高く考証もしっかりして安心して読める。
ひかわきょうこ未体験の方には、過去作の『彼方から』をお勧めしたい。少女漫画の名作です。
20. 阿倍野ちゃこ、天王寺キツネ『ワルキューレのキコ(2)』
現代日本を舞台に、異次元から襲来した「巨人族」と戦う力を持つとされるワルキューレ(葬送姫)であるとされ、世界のために戦うことを強いられた少女、姫子を主人公とするダークファンタジー。
相変わらず絵がうまく戦闘シーンがかっこいい。第二巻では、グロテスクな要素が減りストーリーがスムーズに展開していくので、第一巻よりも読みやすくなった印象。第三巻で語られると思しき、主人公姫子の失われた記憶の内容がかなり気になる幕切れでした。
21. 梶本レイカ『悪魔を憐れむ歌(2)』
北海道で 「箱折事件」と呼ばれる猟奇的な連続殺人事件が発生した。それから8年後、道警の刑事である阿久津亮平は、たった一人の専従班として捜査にあたっているが、道警内部の軋轢に阻まれ苛立ちを募らせる。その前に、奇妙なテンションの耳鼻科医四鐘が現れ、時を同じくして再び箱折殺人事件が発生するというクライムサスペンス。
1巻を読んだ段階では、8年も前の事件に阿久津が強い苛立ちを持って空回りし続ける理由が分からず、四鐘も変人すぎて、話に入り込めない感じがあったのですが、2巻に入り阿久津の過去が語られ始めると、途端におもしろくなってきた。
未だに四鐘のキャラにはなじめないのですが、謎が気になるので続きを読むつもり。残虐描写多めなのと、ちょっとBLテイストを感じるので、そのあたりは好みが分かれるかもしれない。
22. 江藤俊司、三輪ヨシユキ『終極エンゲージ(3)』
遠い未来、様々な異星人がひしめく宇宙を舞台に「地球女王決定戦」にて全宇宙を統べる王の妃を選ぶという設定を縦軸に、サイコパスっぽい王子(次世代の王)の旅と成長を描く物語。
相変わらず、サイコパス王子には共感できないのですが、ヒロイン(王子のクローンで自作自演的な妃候補)とエピソードに登場するキャラが割と好きなので読んでいる。そろそろ本題に入ってきた感じです。
23. 『マイホームヒーロー(2)』
ミステリ小説マニアの会社員が娘のためにヤクザの下っ端を殺してしまい、妻とともに警察の追及を逃れつつ、ヤクザからの報復も避けるために、ミステリの知識を駆使して死体を隠し、事件を隠ぺいするクライム・サスペンスの第二巻。
あまりにも普通すぎる主人公と妻の外見からは想像もつかない大胆で意外な行動は痛快で、テーマの割に読後感は爽快。
24. 津田雅美『ヒノコ(8)』
『彼氏彼女の事情』の津田雅子の最新作は、不思議な力を持つ巫女の存在する古代日本風の異世界を舞台とするファンタジー。伝説の偉大な巫女の力を受け継ぐマユラは、街道で暮らす少年シンと出会い、別れ、そして運命に惹かれて再び巡り合う。8巻にて完結。
少女漫画としては少々難解な筋書きながら、最後は予め決められていた結末へときれいに収束し、読後感の良い物語に仕上がっていると感じた。
25. 宮尾行巳『五佰年BOX(2)』
ふとしたきっかけで、中世日本を模したような不思議な箱を手に入れた青年叶多は、観察を続けるうちに、つい箱の中で動く人間を殺してしまう。慌てて箱の持ち主である幼馴染の真奈に相談に行くと、そこには真奈という人間は存在しておらず、代わりに同年代の見知らぬ青年が幼馴染として現れる。現代日本を舞台にしたSFの第二巻。
設定は面白いものの、淡々と進みすぎて少し物足りない。もう少し話が進むと面白くなりそうな気もしている。
26. ノッツ『初情事まであと1時間』
表題通り、様々な男女の「初情事までの1時間」をカウントダウン方式で描く1話完結方式のラブコメディ。発想の勝利ではあるのですが、しかるべくしてそのような状況に至った男女だけでなく、思いもかけない展開でそのような状況に至る男女もおり、結末(初情事に至る)が分かっているだけに、ニヤニヤと安心して楽しめる娯楽作。
以下は、既刊を一気読みしたシリーズ。
27. 天堂きりん『アイとアオの境界(1)〜(2)』
一軒家で一人暮らしをする書店員の藍子(アイ)は、致し方ない事情により、親戚の男子大学生蒼(アオ)を下宿させることになる。ぶっきらぼうで何を考えているか分からないアオと、過去の恋愛の傷を清算できず一人で生きていくと決めているアイの不器用で奇妙な同居生活はどこか優しい。二人の関係が安易に恋愛に流れないところがよい。絵のうまさも相まって、不思議な世界観に引き込まれる。
28. 天堂きりん『きみが心に棲みついた(上)(下)、同S(1)〜(5)』
大手下着メーカーに勤務する小川今日子は、人付き合いが苦手な自分を変えるために「ふつうの恋愛」をしたいと努力する中で、漫画編集者の吉崎と運命的な出会いを果たすが、時期を同じくして、大学時代に今日子を深く傷つけた先輩の星名が職場の上司として現れる。今日子は星名を忘れようとするが、星名は今日子に執着し、再び精神的に支配すべく様々な策を弄し始める。『アイとアオの境界』の作者、天堂きりんが別媒体で連載している作品。
いわゆるラブストーリーではなく、幼少期からの虐待により自己評価が著しく低下した女性が、なんとか家族からは逃れたものの、不安定な状態に付け込まれて自己愛の強い男性につかまり、DVのターゲットにされてしまう過程をリアルに描いた物語で、サスペンス要素が強いと感じる。
テーマは「先生の白い嘘」に近いけれど、同作よりも主人公が理性的でないので、同種の経験のない人が読むと「主人公にイライラするだけで行動の意味が分からない」と感じそうだし、同種の経験を持つ人が読むと過去の怖い記憶がフラッシュバックして危険。しかし、心理描写は非常にリアルであり、物語として強い力を持っている。続刊。
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29. 押見修造『ハピネス(1)~(6)』
「人間の世界にいてもつらいだけだ。私と一緒に行こう。」鬼才 押見修造の描く現代吸血鬼譚は、ある夜に突然ノラと名乗る少女に襲われて吸血鬼になってしまった少年 岡崎を巡る、切なく寂しく美しい物語。誰もがなすすべもなく、不穏な渦に巻き込まれていく。五所さんに感情移入してしまうので、最後に救いが訪れてほしい。続刊。
30. 市川春子『宝石の国(1)〜(8)』
遙かな未来、人間が滅んだ後の地球を舞台に命を宿した宝石たちが、月から宝石の体を狙ってやってくる敵、月人と戦う物語。第一巻の刊行時に一度読んだのだけれど、登場人物の見分けがつかないのと主人公フォスフォフィライト(フォス)の軽すぎるキャラ設定になじめず、その後追いかけていなかったもの。
アニメ化であまりに評判がよいので読んでみたところ、苦手だと思っていたフォスの設定が伏線だったことと、第二巻以降はキャラ付けがはっきりして見分けがつくようになったことで、一気に最新刊まで読んでしまった。市川春子の描く絵はやはり美しくて、また謎に満ちたストーリーが少しずつ解き明かされていく構成もよい。続刊。
31. はるな檸檬『ZUCCA×ZUCA(1)〜(4)』
資生堂のウェブサイトでの連載『ダルちゃん』で話題のはるな檸檬の既刊。ヅカファン(宝塚ファン)の生態を淡々と綴る、エッセイのような、ショートショートのような作品群。全体を通したストーリーはなく、登場人物も「名もなきヅカオタ」といった趣で名前すらないのですが、絵柄と色彩の美しさと、描かれるヅカオタの宝塚に対するひたむきで前向きな愛情に、宝塚のことを知らなくても十分に楽しめて、かつ、読むとちょっと元気になれる。とりあえず4巻まで読みましたが、全10巻あるようなので、元気が足りないときに少しずつ読む予定。
32. 遠藤浩輝『ソフトメタルヴァンパイア(1)〜(3)』
「元素使い」である「吸血族」に支配される未来の世界を舞台とするダークファンタジー。主人公の少女ミイカは、人間でありながら元素使い、それも吸血族の弱点である「銀」の元素を使いこなす能力を持つことが分かり、吸血族に命を狙われる身の上となる。「元素使い」という設定が面白く、完全にエンターテイメントでありながら、元素についての説明が割と勉強になる感じがある。キャラクター造形も素直で親しみやすい。続刊。
33. Cuvie, 村山久美子『絢爛たるグランドセーヌ』
気になっていた既刊を読み返すシリーズ。現代日本を舞台に、バレリーナの卵である少女たちがプロを目指して成長する王道バレエ漫画。絵がうまくバレエ漫画として安心して楽しめる。続刊。
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参加しています
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