ぶち猫おかわり

料理ときどきぶち猫二匹

山形まで蕨採りに行った話 ー蕨のあく抜き法とおいしい食べ方8選ー

蕨を採るために山形まで行ってきた

4月の終わり頃、ふいに友人から山形に一泊二日で山菜を採りに行きませんかと誘われた。山菜には人を惑わす魅力があると聞くが、東京でインドアな生活をしているので山菜採りをしたことがない。人生で一度くらい真面目に山菜を採取する経験をしてもいいかもしれない。そう考えて、参加させてもらうことにしたのでした。

今回、山菜を採りに行くのは山形県最上町。東京からだと、東北新幹線で古川駅まで行ってから陸羽東線に乗り換えて、45分ほどかけて鳴子温泉駅へ。

この時点で、すでに電車のドアの開閉が手動だった。雪が深い地域に来たのだなと実感する。ここから同じ陸羽東線の新庄行に乗り換えて、さらに40分ほど。

最初の行き先は、瀬見温泉駅。のどかな無人駅で、suicaを使うことができなかった。完全に油断していた。電車の車掌さんに、次に有人駅を経由するときに精算するための明細書を書いてもらった。

瀬見温泉は、時間が止まったような不思議な場所で、廃墟のような情緒溢れる浴場にて、日帰り温泉枠で熱めの温泉につかりました。

その後、同行した友人のご両親が迎えに来てくださって、最上町へ。自然体験的な施設内にあるコテージを借りて一泊して、翌朝早くから山菜採りに出かけるという計画です。

夕ご飯は、今回の山菜採りに参加する地元の方々が用意してくださって、わたしたちは手土産のお酒と会費をお支払いするだけだったのですが、釣りたての川魚を炭で焼いたもの、新鮮な山菜料理、山で採れたきのこのお蕎麦など、最高のおもてなしを頂いてしまった。

日本酒は、なぜか裏鍋島や雪の茅舎「美酒の設計」その他の豪華なラインナップで、ちょっとバグっていた気がする。この日は、コテージにて22時には就寝。なぜならば、翌朝6時30分には支度を整えて山菜狩りに出発することになっていたからです。

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翌日の蕨採りについては、作業に精一杯で写真をほとんど撮影していないので、この記事を参照して下さい。二番目に出てくるケンちゃんが今回のナビゲーターであり、鬼軍曹です。鬼軍曹は山菜の採取になるとめちゃくちゃ厳しいのですが、その裏には東京からわざわざ新幹線に乗って蕨を採りに来たという、もの好きな私たちを驚かせたいというサービス精神を感じました。

わたしは人生で初めて藪の中を分け入って、中腰で山菜を探し回るという経験をしました。段々と蕨を見つけるのが快感でハイになってくるのですが、こういうテンションで里山で遭難するんだろうなーという予感もしたので、なるべく他の人から離れないように必死でした。

他の参加者によると、今年の蕨は例年より早かったそうで、昨年の1/3も採れなかったようです。それでも、蕨初心者のわたしたちには十分な量でした。

蕨採りの後は、お昼ご飯を食べてから日帰り温泉に立ち寄って、山菜採りの汗を流して終了。わたしたちは最寄りの駅まで送って頂いて、新幹線にて帰途についたのでした。

とても楽しい週末でした。

蕨のあく抜き方法

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帰宅して、その日のうちに蕨のあく抜きをしました。できるだけ早くやったほうがいいようです。あく抜き方法には諸説あるようですが、今回はわたしが実際に試してうまくいった方法を記録しておきます。

【 蕨のあく抜き方法 】

  1. 蕨はボウルに入れて流水でよく洗う。根元が固い場合は切り落とす。
  2. 蕨が入るサイズの鍋になみなみと湯を沸かして、蕨1kgあたり3gの重曹を溶かす。
  3. ぐらぐらと煮立ったお湯の中に蕨を入れ、表面をキッチンペーパーで覆う。強火で再沸騰させてから、直ちに蓋をしめて火を止める。
  4. そのまま半日放置した後、流水でよく洗い流す。

重曹を入れすぎると蕨が溶けてしまうようなので、分量はちゃんと計りましょう。また、加熱しすぎると食感が悪くなるので、再沸騰したら容赦なく蓋をして火を止めましょう。

うまくできると、半日放置した後に、緑色のどろっとした液体に浸かった程よい固さの蕨が完成します。えぐみは全くなく、サクサクしてちょっと粘り気のある歯ごたえのよい仕上がりになりました。

タンサン (重曹) 2P入 50g

タンサン (重曹) 2P入 50g

 

蕨の保存法と保存期間

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あく抜きした蕨は、野田琺瑯のレクタングル浅型Lサイズのタッパーに詰めて水を張り、表面が乾かないようにキッチンペーパーで覆ってから蓋をしめて冷蔵庫で保存しました。水は毎日交換します。Lサイズを使うと、長めの蕨も切らずにそのまま保存できてべんり。

この方法で、あく抜きをした日(採取した日)から少なくとも9日間はおいしく食べることができました。なお、6月上旬の東京の気候です。

野田琺瑯 ホワイトシリーズ レクタングル浅型セット

野田琺瑯 ホワイトシリーズ レクタングル浅型セット

 

蕨のおいしい食べ方8選

この大量の蕨を使って、8通りの料理を試したので、その軌跡を記録します。

1. 蕨の生姜醤油

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まずは、シンプルにそのまま。写真ではすりおろし生姜に醤油をかけましたが、かつおぶしと醤油でもおいしい。あとポン酢をかけるのもよかった。蕨そのものがおいしいので、手間をかけなくてもおいしい。

■ 材料(二人分)

 あく抜きした蕨 適量 

 生姜      ひとかけら 

 醤油      適宜

■ 作り方

蕨を食べやすい長さに切って、すりおろした生姜をのせて醤油をかける。かつおぶしの場合には、生姜の代わりにかつおぶしをのせて醤油をかける。

2. 蕨と車麩の味噌汁

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次は、お味噌汁に入れてみました。コツは煮過ぎないこと。蕨のサクサクした食感と車麩のジューシーな食感の対比が面白い。温めることで蕨の香りも立ちます。

■ 材料(二人分)

 あく抜きした蕨 ひとつかみ 

 車麩      6cmほど

 出汁      500cc 

 味噌      適量 

■ 作り方

お好みのだし汁を引く。今回は煮干し出汁にしましたが、何でもいいと思います。鍋に600㏄ほどの水と煮干し6匹を入れて沸騰するまで加熱し、煮干しを取り出してから、食べやすい大きさに切った車麩(戻さずにそのまま入れてよい)を入れて、盛りつける直前に味噌とわらびを加える。 

3. 蕨納豆

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納豆が好きなので、なんでも納豆に入れてしまう部族です。蕨の他に一緒に採取した山菜の「うるい」(後述)の茎部分を刻んで加えました。ぬるっとした蕨の食感が納豆と合う!と思いましたが、ただわたしが納豆好きなだけかもしれません。

■ 材料(二人分)

 あく抜きした蕨 一つかみ 

 納豆      一パック 

 うるい     少々 

 卵黄      一個

 白胡麻     少々 

■ 作り方

納豆に付属のタレ(ない場合は醤油とみりん少々)を入れてかき混ぜてから器に盛り、上から、食べやすい大きさに切った蕨、うるい、卵黄、白胡麻をかける。よくかき混ぜて、おつまみとしてそのまま食べたり、海苔にのせて食べたり、ごはんにかけてもおいしい。

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ちなみに、今回は古川駅@宮城県の駅ビル内にあったスーパーで購入した「古川納豆」を使いました。ジャケ買いです。

最近は旅行に行くと、おみやげ屋ではなく地元のスーパーに立ち寄って、その土地ならではの食材や調味料を自分用のおみやげとして買うようになってしまいました。

4. 蕨の甘辛炒め

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ちょっと変化をつけようと思い、甘辛く炒めてみました。しゃきっとした食感を生かすために、炒めすぎないのがコツです。ごはんの進むおかずになりました。

■ 材料(二人分)

 あく抜きした蕨  二つかみ 

 豚ばら肉     150g 

 醤油・みりん・酒 各大さじ1と1/2

 油        小さじ1(テフロンならなくてもよい)

■ 作り方

フライパン(テフロンでよい)に油を入れ、食べやすいサイズに切った豚バラ肉を入れて、色が変わるまで中火で炒める。蕨を加えて全体を軽く混ぜてから、鍋肌に酒とみりんを入れて火を強め、沸いたら醤油も加えて、煮詰めながら煮汁を食材に絡ませる。

北陸アルミ フライパン IHハイキャスト 26cm 「オール熱源対応」

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5. 蕨の牛しゃぶポン酢

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今度はさっぱりと牛肉と合わせてみました。

■ 材料(二人分)

 あく抜きした蕨  二つかみ 

 牛しゃぶしゃぶ用 150g

 調理酒      大さじ2 

 ポン酢      少々 

 白胡麻      少々

■ 作り方

小鍋に水を張り、調理酒を加えて火にかける。軽く沸騰したら中火にして、牛肉を茹でる。お湯は沸騰させすぎず、牛肉は火を通しすぎないように気をつける。また、湯がいた後の肉を水や氷で冷やすと水っぽくなるので、広げてざるにあげるだけに留める。牛肉と蕨を和えて、上からポン酢と白胡麻をかける。ポイントはおいしいポン酢を使うことで、わたしは馬路村のやつがお勧めです。

牛肉を茹でた後のお湯は強火にかけて3分ほど沸騰させるとアクが浮いてくるので、これを取り除いた後に塩、醤油と調理酒で味付けして、卵を溶きいれるとかきたま汁になり、もう一品できます(右上)。

馬路村農業協同組合 ぽん酢醤油ゆずの村 500ml

馬路村農業協同組合 ぽん酢醤油ゆずの村 500ml

 

6. 蕨とろろ二種

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蕨を細かく叩くと粘り気が出てとろろみたいな質感になると聞いたので、早速試してみました。安直ですが、山芋のとろろと納豆に合わせています。さっぱりと食べられる小鉢としてちょうどいい一品。

■ 材料(二人分)

 あく抜きした蕨 適量(見た目よりたくさんできるので控えめの量にする) 

 好きな味噌   小さじ1 

 とろろ     5cmくらい 

 納豆      一パック

■ 作り方

あく抜きした蕨を小口切りにした後、味噌を加えて粘りが出るまで包丁で叩く。山芋はすりおろし、器に納豆、とろろ、叩き蕨の順に盛り付ける。全体を混ぜて食べる。

 

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ちなみに、この日の食卓の全景です。とうもろこしご飯、しめじとプチトマトのお味噌汁、胡瓜と黄ニラのピリ辛炒め、赤ピーマンとアスパラの焼浸し、蕨とろろ、しし唐じゃこ炒め、ヤングコーンの丸焼き。

 

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蕨とろろが気に入ったので、バリエーションでもう一回作りました。今度は山芋をおろさずに薄切りにして食感を生かしたバージョンです。黄身醤油が合います。

■ 材料(二人分)

 あく抜きした蕨 適量(見た目よりたくさんできるので控えめの量にする) 

 山芋      3cmくらい 

 卵黄      1個

 醤油      小さじ1 

■ 作り方

あく抜きした蕨を小口切りにした後、粘りが出るまで包丁で軽く叩く。山芋は薄切りにする。卵黄は醤油とよく混ぜる。器に、山芋と叩き蕨を盛り付け、上から黄身醤油をかける。

7. 蕨、揚げと筍の炊き合わせ

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初心に戻って、炊き合わせに。出汁の香りで食べる優しい一品です。他の具材がシンプルな分、蕨のビジュアルが映える感じがよかった。

■ 材料(二人分)

 あく抜きした蕨 一つかみ 

 油揚げ     一枚 

 たけのこ    好きなだけ 

 しめじ     好きなだけ

 出汁      300cc(かつおぶしと昆布)

 調理酒・みりん 大さじ1

 醤油      小さじ1

 塩       少々

■ 作り方

鍋に水400㏄と出汁昆布を入れて火にかけ、沸騰する直前に昆布は取り出す(余裕があれば、少し前から昆布を水につけておくとなおよい。)。沸騰したらかつおぶしを入れて、弱火にして沸騰をさせない状態で5分ほど加熱する。

かつおぶしを取り出して、調理酒とみりんを加え、一口大に切ったたけのこ、石ずきを切り落として手で裂いたしめじ、三角形になるように切った油揚げを入れて、弱火で5分ほど煮る。醤油を加え、味をみて薄いようであれば塩で調整する。最後に、食べやすい大きさに切った蕨を加えて、出汁に浸してから、器に盛り付ける。

8. 鶏肉と蕨の照り焼きバターソテー

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最後は、蕨を少し洋風に/こってりした感じにアレンジしてみたいなと思い、鶏肉のソテーと合わせて、バターの入った照り焼きにしてみました。こってりが苦手な人はバターなしで作って下さい。

■ 材料(二人分)

 あく抜きした蕨  一つかみ 

 鶏もも肉     一枚 

 醤油、酒、みりん 各大さじ2

 バター      10g 

■ 作り方

鶏もも肉は半分に切り、肉の厚い部分があれば、包丁で切れ目を入れてできるだけ均一な厚さにする。フライパンに鶏もも肉を皮目から入れて、中火でじっくりと加熱する。皮がパリッとしたら裏返して火が通るまでゆっくりと中火で加熱する。

そろそろ火が通ったと思われるタイミング(指で押してみると弾力が変わるのでわかりやすい)で調理酒を鍋肌から入れて、蓋をして3分ほど蒸し焼きにする。その後、醤油とみりん、バターを入れて、フライパンを揺すりながらタレを煮詰め、とろみがついたら火を止める。

火が通った鶏肉は取り出してまな板で一口大に切る。フライパンに食べやすい大きさに切った蕨を入れてタレを絡める。器に鶏肉、蕨の順で盛りつけて、上からフライパンに残ったソースをかける。

 

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この日の食卓の全景。そろそろ蕨を食べきりたかったので、蕨尽くしの夕ご飯になりました。とうもろこしご飯は、まとめて炊いて冷蔵しておいたものですが、土鍋で炊いている関係でこの日はお焦げが目立っている次第です。

おすそ分けの献立(追記)

あく抜きした蕨をおすそ分けした先の献立を追記。

まいけるさんちの胡麻油出汁醤油炒めと銅蟲先生のわらびTKGです。

その他の山菜

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今回の山菜採りは蕨がメインだったのですが、山を歩きながら偶然見つけた他の山菜も一部採取しました。危ないので、地元の方に食べられると教えてもらったものだけを採取しています。写真の右から、アマドコロ、山うど、シオデ、うるいです。

シオデについては、現場では「以前この辺りで栽培していたアスパラガスが野生化したものだと思う。」と聞いていたのですが、あとで調べたら、シオデという結構貴重な山菜だった模様です。

 

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なるべく新鮮なうちに食べきるべく調理したものがこちらです。

右上から時計回りに、うるいポン酢、アマドコロの酢味噌和え、シオデの酢味噌和え、蕨の生姜醤油、山うどラム炒めです。うるいとアマドコロは、シャキシャキした食感にかすかなほろ苦さが山菜らしいおいしさ。シオデはあまり癖がなく、風味が豊か。

山うどは、表面が少し硬く皮を厚く剥く必要がありましたが、香りがすばらしくよくて、ラムとの相性がばっちりでした。

おみやげ

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最後に、古川駅の駅ビルで買ったもう一つの自分用のおみやげ。「きあげ醤油」という近隣で生産されているらしい醤油です。醤油は地域によって結構味が違うのでおもしろいのです。これもパッケージの手作り感にやられてのジャケ買いです。 

まだ開けていない(他にも醤油がたくさんあるため)のですが、どんな味がするのか楽しみです。

以上です。

お題「思い出の味」

告知的なもの

esse-online.jp

最近、ESSE Onlineにて、器の活用法について、ニーズが不明な連載記事を書いているので、興味のある方がいたら読んで頂けると幸甚です。

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