大きなフェンネルを一株買った
先日、近所のスーパーで大きなフェンネルを見かけた。一抱えほどもあるそれは、何事もない感じで売られていた。わたしは今まで生のフェンネルを料理したことがなかったので、何に使ったらよいか全くわからなかったのだけれど、外出自粛の折、これを使っていろいろな初めての料理に挑戦するのはいかにも楽しそうだなと思いついて、そのまま購入した。
それが、上の写真のフェンネルである。さっそくTwitterに報告したら、調理のヒントになるような貴重な情報を頂いた。
ぶち猫さんこんばんは
— 生物群 (@kmngr) 2020年7月10日
・フィノッキオと柑橘のサラダhttps://t.co/UPlpCIGBnm
・鰯と茴香のパスタhttps://t.co/WFmKodvPUQ
・茴香と羊の水餃子
・フェンネルの葉のペスト
を作ったことがあるのですが、これらを使うと使いきれます!し、水餃子とペストは保存食なので保ちます。羨ましいです〜!
頂いた情報も参考にして、フェンネルを使って13種類の料理を作ったので、ここに記録しておきたい。
なお、買ってきたフェンネルは最初に鱗茎部分を切り離してキッチンペーパーで包んでジップロックに入れ、葉の部分は野田琺瑯レクタングル浅型Lサイズ(底面にキッチンペーパーを敷く。フェンネルは洗わずにそのまま。)の中に詰めておいた。
こうすると、取り出しやすいのでちょっとした料理に使いやすくなる。うちでは使いさしの野菜をまとめて琺瑯容器に入れて一覧性を持たせることで、野菜の使い忘れをできるだけ防ぐようにしている。保存性もよく、この状態で一週間以上新鮮さを保つことができた。
1. ジャガイモのフェンネル風味
初めに作ったのは、以前から気になっていた「じゃがいものフェンネル風味」。
レシピは、白金高輪にある中国少数民族の料理店「蓮香」の小山内シェフによるもの。千切りにしてさっと湯掻いたじゃがいもを調味料とフェンネルの葉でマリネする。フェンネルの香りが爽やかで、酒の肴としてすこぶるよい。もちろん夕ご飯のおかずにも。
一皿目からかなりおいしいものができてしまって、フェンネルを巡る旅の先行きはなかなか明るそうだとほくそ笑む。
「じゃがいものフェンネル風味」は載っていないけれど、蓮香の小山内シェフが参加している書籍『ハーブ中華・発酵中華・スパイス中華』には、まだ日本ではマイナーなハーブや発酵食品やスパイスを使った中国少数民族料理の(日本では手に入りにくい材料を使った)レシピがふんだんに掲載されていて、読み物としてもとても興味深いので、このあたりの料理に興味がある方にはとてもお勧めできる一冊といえる。
2. 鰯とウイキョウのパスタ
Twitterで生物群さんから教えてもらったレシピで、鰯とウイキョウのパスタを作った。ウイキョウとはフェンネルの和名。世界各国で愛されているフェンネルは、国によって異なる名前で呼ばれている。本稿では、参照したレシピでの呼称をベースに、雰囲気で呼び分けていきたいと思う。
このパスタは、まず鰯を開いて油でカリッと揚げる。少し手間だけれど、その手間があってこそのおいしさだと感じる。
別の鍋で、刻んだにんにく、玉葱、ウイキョウの鱗茎(フィノッキオと呼ばれる。)をソテーして、鰯と合わせてパスタと和える。今回は手元で鰯とほぐし合わせる形にした。ウイキョウの鱗茎の甘みとスパイシーさが入り混じった味わいは鰯ととても合う。
3. フィノッキオとグレープフルーツのサラダ
こちらもフェンネルの鱗茎(フィノッキオ)を使った一品。元はオレンジを使ったサラダだったけれど、スーパーに行ったらピンクグレープフルーツがたくさん出ていたので、代えて作ってみた。
フィノッキオは味わいがしっかりしている割に癖が強すぎないので、スライスして生で食べるのにもいいなという感想。グレープフルーツの甘酸っぱさをほどよく引立ててくれる、夏にぴったりのサラダだった。
この日は、鰯とウイキョウのパスタ、フィノッキオとグレープフルーツのサラダを作ったので、食卓がフェンネル尽くしになったのでした。
4. フェンネルと夏野菜のポトフ
ちょうど樋口直哉さんのレシピで『現代的なチキンストック』を作って冷凍したものがあったので、ウィンナーソーセージとフェンネルと夏野菜を使ってポトフを作った。
フェンネルは鱗茎部分を刻んで、2㎝幅に切ったソーセージ、1㎝幅に切ったベーコン、他の野菜(かぼちゃ、人参、メークイン)と一緒にオリーブオイルでソテーして、チキンストックで煮込んでいる。最後にフェンネルの葉を生のまま少し飾って、自家製のマスタードを添えた。味付けは塩胡椒。
フェンネルの鱗茎は煮込むと、玉ねぎのようなセロリのような繊維質の食感がほんのり残りつつも柔らかい口当たりになる。特徴的な香りはそのままだ。
フェンネルの鱗茎は煮込んでもおいしいということが分かってよかった。なお、このポトフはきちんと抽出したチキンストックを使ったことでスープが異常においしくできたことも特筆すべき点だ。少しとろみがあって、コクが深い。
圧力鍋を使う上のレシピだと比較的短時間で出来上がるので、料理が好きという向きには一度作ってみることをお勧めしたい。樋口直哉さんのレシピはどれもロジカルで読み物としても面白いので、最新の書籍も買ってしまった。
おにぎりの作り方についてのレシピ本のようだけれど、トマトソース、ハンバーグ、マカロニグラタン、ロールキャベツなどの定番料理のロジカルで「腑に落ちる」レシピが掲載されていて、日々の食事作りを少し楽しくしてくれること請け合いである。
5. フェンネルとパセリのチーズオムレツ
レシピ本をいろいろ読み返していたら、『GRAND HYATT TOKYO とっておきの朝食レシピ』にハーブを使ったオムレツのレシピが載っていておいしそうだったので、フェンネルも合いそうだなと考えて、手元にあったパセリと合わせてチーズオムレツを作ってみた。
【フェンネルとパセリのチーズオムレツ・レシピ】
① 卵M3個、とろけるチーズ一掴み、塩小1/2、白胡椒、フェンネル(一枝)とパセリ大2(いずれも刻む)をボウルで溶きほぐす。
② 直径20cmのフライパンにバター10gを入れ、①の卵液を加え、中火でかき混ぜながら加熱し、表面が固まったら形を整える。
フェンネルとパセリのチーズオムレツ。フェンネルが見た目の1.5倍は入っていて、フェンネルの葉の風味をダイレクトに味わえる贅沢仕様。 手軽にフェンネルのおいしさを味わえるので、手に入ったときはぜひやってみてほしい一品。
最近、北陸アルミの直径20cmのテフロンフライパンを購入したら、卵料理が捗るようになってしまった。卵料理以外にも、少量を加熱したいとき、大きいフライパン(北陸アルミの26cmテフロンフライパンも持っている。)を他の料理で使っているとき等に大活躍していて、ほぼ毎日使っている。もっと早く買えばよかった。
6. 茴香と羊肉の雲吞(ワンタン)
これも生物群さんにエッセンスを教えてもらったもの。ただし、スーパーで餃子の皮を買ったつもりがうっかり雲吞の皮だったので、そのまま包んでしまった。
【茴香と羊肉の雲吞(餃子)30個・レシピ】
・羊肉 200g
・茴香(鱗茎と葉を合わせて) 100g
・松の実 15g
・塩 小1/2
・砂糖、クミン 小1
・醤油、紹興酒、胡麻油、ラード 各大1
・水 大3
ミンチにした羊肉に塩を入れて練り、みじん切りにした茴香の鱗茎と葉、同じく刻んだ松の実、その他の調味料を入れてよく混ぜ、2時間以上(時間があれば一晩でもよい。)寝かせてから包む。
ラードがなければ、胡麻油の量を増やして下さい。松の実は香ばしくて食感に変化がでる重要な要素なので、できれば入れてほしい。
雲吞も餃子と同じく冷凍ができるので、多めに作って、重ならないようにバット等に並べてラップをして冷凍しておくといい。表面が凍ったところで、ジップロックに移し替えておくと後日使いやすい。
この日はちょっと茹ですぎてしまったけど、皮はつるんと餡は肉々しくて、茴香の香りと松の実の歯ごたえがよい。
実はこの後に別の具で餃子も作って冷凍保存したのだけれど、個人的には冷凍しておくには餃子よりも雲吞のほうが軽くて日常の料理で使いやすかった。平日の忙しい夕飯時に、お湯を沸かしてぽいぽいと冷凍のままの雲吞を入れ、葱や青菜等の適当な野菜を刻み入れて、塩胡椒、辣油で味付けをするだけ。これで汁物が一品できるのは本当にありがたかった。
この日の雲吞には、黒酢醤油と豆鼓辣油を添えた。豆鼓辣油は老干媽の風味豆鼓。その他のおかずは、鶏トマトそばと御徒町の吉池で買った蒸し栗蟹。若干破綻気味の献立だけれど、吉池に行った日は欲望に負けてどうしてもこのような有様になってしまいがち。
栗蟹と鶏トマトそばのどちらを先に食べたらよいのか迷子になってしまったが、まあどれもおいしかったからよかったことにしたい。
「鶏トマトそば」は、白央篤司さんのレシピ。鶏のひき肉、トマトとセロリと何らかの麺(お素麺でいい。)があれば簡単に作れるので、忙しいときやご飯を作る気力がない日にとても助かる一品。
この日は、空心菜と青唐辛子を刻んで入れた。出汁に使ったセロリの存在感、スープのコクと満足感が素晴らしく、手順が簡単さからはにわかに信じがたい一品だった。
毎日の献立に悩んでいる人がいたら、ぜひ一度作ってみてほしい。いいレシピです。
ちなみに吉池の栗蟹はまだ生きているものを買ってきたので、わたしが責任をもって蒸しました。蒸したての活き蟹はすこぶるおいしい……。
7. レンズ豆のスープ、茴香と羊肉のラビオリ
最近定番食材入りしつつある、レンズ豆を使ったスープ。レンズ豆は浸水も長時間の加熱もいらないので、思い立ってすぐに作れて、それでいて豆の旨みを活用できるところがとてもいい。
小鍋にバターを熱し、角切りベーコンと根菜類、レンズ豆をよく炒めてから、冷凍しておいたチキンストックの二番出汁を入れる。ふつふつと沸いてきたところで、冷凍してあった茴香と羊肉の雲吞を「君はラビオリだ」と言い聞かせて浮かべた。チキンストックと雲吞を作り置きしておいて助かった事案である。
簡単に作ったのに、豚ベーコン、チキン、羊肉、バターと豆という旨みマシマシの組み合わせになって、何とも滋味あふれたスープになったのだった。
8. フェンネルとサーモンのミ・キュイ
フェンネルは魚介類に合うハーブなので、魚料理も作ってみることにした。北欧風にしつらえたサーモンのミ・キュイ。ミ・キュイ自体はフレンチの前菜で、低温で調理することにより、生と加熱済の中間のような不思議な食感を味わえる料理。
今回は、樋口直哉さんのレシピをベースにして、厚切りのサーモンをブライニングした後にAnova(低温調理器)を使って45度で1時間加熱した。
仕上げに、フェンネルの鱗茎をスライスしてオリーブオイルと塩胡椒でマリネしたものをお皿に敷き、サーモンを置き、上からフェンネルの葉と刻んだ松の実、バルサミコ酢とバターのソースをかけている。
盛り付けは、最近よく観ている東京白金にあるフレンチレストラン、ラ・クレリエールの料理動画で柴田シェフが説明しておられた、「料理は右下から食べ始めることが多いので、初めに食べてほしい部分を右下に配置し、食べ進むにつれて少しずつ味が変わるように、左奥に向けてソースやトッピングを添える」という言葉を胸に刻んで、手前はプレーンなサーモン、奥に進むにしたがって、バルサミコソース、フェンネル、松の実、トマトが加わって味のバリエーションが生まれるようにした。
ラ・クレリエールの動画は、無料でこんなに専門的なものが観られていいのか!と思うクオリティなので、とてもお勧めです。
9. フェンネルのペスト
こちらも生物群さんに教えてもらったもの。ペストにして消毒した瓶に詰めておくとしばらく保存できるので、生のフェンネルが残ってしまったときにもお勧めのレシピ。
【フェンネルのペスト・レシピ】
・フェンネル(葉と鱗茎) 120g
・松の実 30g
・オリーブオイル 100ml
・塩 小1弱
全てを合わせてミキサーで細かく粉砕するだけ。オリーブオイルはおいしいものを使って下さい。いろいろな料理に合わせやすいように、にんにくは後入れにしました。
色は濃い緑色でいろいろな料理に映えそう。使うのが楽しみになる。保管は冷蔵庫でお願いします。
10. フェンネルのペストのパスタ
上で作ったペストを使って、さっそく試してみたパスタ。色合いが美しい。プラスしたニンニクとパルミジャーノレッジャーノのコクがパスタソースにちょうどいい重みを加えてくれた。フェンネルのおいしさをダイレクトに感じられる一品に。
【フェンネルのペストのパスタ・レシピ(2人分)】
・フェンネルのペスト 全体の半量ほど
・ベーコン すきなだけ
・鷹の爪 1個
・にんにく 1かけ
・パルミジャーノレッジャーノ 大さじ2
・オリーブオイル 大さじ2
・スパゲッティーニ 180g
①フライパンにオリーブオイルを熱し、刻んだにんにくとベーコン、鷹の爪を入れてベーコンがカリカリになるまで炒める。
②パスタを茹で、ゆで汁50mlを①のフライパンに入れて、ゆすりながら乳化させる。
③①のフライパンにフェンネルのペスト、すりおろしたパルミジャーノレッジャーノを加えて軽く混ぜ、塩胡椒で味を整える。
④ゆで上がったパスタを③のフライパンに加えてよく混ぜ合わせる。
11. 桃茴香
フェンネルのペストの展開その2。皮を剥いて8つに割った桃をフェンネルのペストでマリネするだけ。フェンネルの少し青臭い匂いと松の実の香ばしさが、桃の優しい甘みと調和する一品。
そのまま食べるには少し甘さの足りない桃をサラダ仕立てにするときに重宝しそう。
この日は、フェンネルのパスタと桃茴香に、茄子のバルサミコマリネの三品だったので、再びのフェンネル尽くしの食卓でした。
茄子のバルサミコマリネは、乱切りにして揚げた茄子に塩胡椒とバルサミコ酢を絡めただけ。冷めてもおいしく食べられるし、パスタとの相性も最高でよかった。
12. 帆立のカルパッチョ フェンネルのペスト
この日の献立は、牛肉と野沢菜の発酵唐辛子炒め、帆立のカルパッチョ フェンネルのペスト、ニラミン玉、トマトとアラのお味噌汁、白ご飯という少しエスニック寄りでした。
牛肉と野沢菜の発酵唐辛子炒めは、野沢菜に発酵唐辛子という発酵の漬物を重ねてみたところ、酸味と旨みが凝縮された味わいになって、牛肉と相まってご飯が止まらなくなった。
ニラミン玉は、市ヶ谷のスパイス料理店「牧谿」で食べておいしかったものを再現してみた。牧谿というお店には、初めての味なのになぜかとてもおいしく感じられる料理が次々と出てきて頭が混乱してしまう楽しさがあるので、ぜひ一度お試しください。
13. フェンネル入りのボルシチ
さて、最後はボルシチ。オレンジ色のボルシチに、最後に残ったフェンネルの葉を添えてみた。レシピは、イスクラさんの『ノスタルジア食堂』、鳩棲舎さんの『本格的なボルシチの作り方! 』を参考にして作ったもの。
購入したビーツがマーブルだったので真っ赤なスープにはならなかったけど、塊の牛肉を煮込み、野菜をたっぷり入れたスープは旨みが凝縮されて本当においしかった。
「ノスタルジア食堂」は東欧の家庭料理レシピ集で、副題は「労働者の在りし日の食卓」。料理もさることながら、使用されているうつわに加えて食卓のしつらえまでもが現地の雰囲気たっぷりで、まるで旅をしているような気分になる。
巻末のコラム(うつわのカタログや現地の食堂の案内。素敵な写真たっぷり。)も充実していて、世界が落ち着いた暁には東欧を旅したいと思うことしきりになった。
ボルシチは普段はあまり作らないだが、牛肉のスープにサワークリームを溶かしこんで食べるのは本当においしいなぁと思った。肌寒くなった頃に、今度は真っ赤になるよう赤いビーツを購入して作りたい。
以上、全13品、無事にフェンネルを一株使い切った記録でした。
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