2018年1月に読んだマンガ作品の紹介と感想です。
1. 近藤聡乃『ニューヨークで考え中(2)』
画家・アニメーション作家であり、『A子さんの恋人』の作者として漫画家としても活動する近藤聡乃が活動の拠点としているニューヨークでの生活を綴ったエッセイ漫画。第一巻から約3年ぶりの刊行となる第二巻。
のびやかで美しい線で描かれた絵は洗練されていて、画面を見ているだけでも楽しい。つらいことも大変なこともあるだろう異国の生活が穏やかでフラットな目線で描かれており「ここではないどこか」での暮らしへ読者を誘い、しあわせな気持ちをもたらしてくれる。長く続いてほしい作品の一つ。
2. 水上悟志『二本松兄妹と木造渓谷の冒険』
「戦国妖狐」や「スピリットサークル」の水上悟志による、「拝み屋」で「半妖」の二本松兄妹の活躍を続く一巻完結の冒険活劇。
主人公である二本松兄弟(陰気で金にうるさいが慇懃な兄 朱彦と気が強く元気な妹 雪緒の異母兄妹)、トラブルをしょい込んで転がり込む座敷童ねりね、憎めない敵役の霊堂と手下の雀たちなど、魅力的なキャラクターが「木造渓谷」という摩訶不思議な舞台を所狭しと暴れまわる。
広げられた大風呂敷がきれいに畳まれていく終盤の展開はまさに爽快で、完成度の高いエンターテイメント。二本松兄妹のキャラクターが魅力的なので、ぜひ続編が読みたい。
3. るーすぼーい、古屋庵『無能なナナ(3)』
「人類の敵」と呼ばれる化け物が出現し、これに対抗できる超能力を持つ人類が生まれるようになった近未来を舞台に展開するサスペンス。「人類の敵」と戦う能力を養うために、絶海の孤島に作られた学園に集められた超能力者たち。その学園にある日「ナナ」という名前の可愛らしい少女が転校してくるところから物語は始まる。ナナの目的、そして「人類の敵」とは何なのか。
既視感のある設定ながら、二転三転するストーリーと意表をつくキャラクター設定で読ませる。特に、主人公の「ナナ」と敵役にあたる「キョウヤ」は、典型的な主人公と敵役を交換したような設定になっており、読者の予想を裏切る展開と合わせて、物語を盛り上げている。三巻では、第三勢力の存在も明らかになり、複雑化する謎に答え合わせが楽しみな一作。
4. ゆうきまさみ『でぃす×こみ(3)』
趣味で漫画を描いていた兄が、少年漫画家を目指す妹かおるの名前を勝手に使ってBL漫画を投稿したところ、新人賞に入選してしまい、取り違えにより妹のかおるがBL漫画家としてデビューを果たすことになってしまう。天才肌の兄と努力家の妹を対比させながら描かれる、ゆうきまさみ版マンガ道ともいえる作品。第三巻が最終巻。
ゆうきまさみの描く「BL漫画(ただし描写はライトめ)」のさわりが読めるというファン垂涎の設定と毎回異なるゲスト漫画家が彩色したカラーページがとにかく豪華。今回は、特にわたしの大好きな五十嵐大介先生の彩色回があって眼福でした。
5. 五十嵐大介『ディザインズ(3)』
遺伝子操作により人化され軍事利用される動物たち「HA(ヒューマナイズド・アニマル)」を巡る壮大な陰謀と策略を描くSF譚。第三巻では、人化されたイルカたちが紛争地域へと投入され、人間たちの残酷な思惑に翻弄され、さらになぜHAが作られたのか、より深い陰謀の一端が明かされていく。
五十嵐大介の綴る世界は残酷であり、かつ、圧倒的に美しい。いつかアニメーションになって動くところを見たい作品の一つ。
ときどきオクダみたいなマッドサイエンティストの秘書に転職して、淡々と事務作業をこなしつつ間接的に世界の破滅に貢献するような仕事に就くのもいいかもしれないなどと考えてしまう。
6. 水上悟志『水上悟志短編集「放浪世界」』
「戦国妖狐」や「スピリットサークル」、そして上でも紹介した「二本松兄妹と木造渓谷の冒険」の作者である水上悟志が、連載と掛け持ちで描いてきた短編をまとめたもの。短編集ながら、一つ一つの物語の完成度が素晴らしい。わたしは、特に虚空を旅する巨大な団地ロボットの物語「虚無をゆく」が好きでした。
シュールながらユーモアも欠かさないSF世界は、石黒正数の作風にも通じるところがある。安定した絵柄も読みやすくてよい。
7. 押見修造『ハピネス(7)』
「人間の世界にいてもつらいだけだ。私と一緒に行こう。」
鬼才 押見修造の描く現代吸血鬼譚は、ある夜に突然ノラと名乗る少女に襲われて吸血鬼になってしまった少年 岡崎を巡る、切なく寂しく美しい物語。誰もがなすすべもなく、不穏な渦に巻き込まれていき、物語は佳境に至る。
8. 藤田和日郎『双亡亭壊すべし(7)』
大正時代から神隠しのうわさが跡を絶たないにも関わらず、物理的な手段では取り壊すこともできず存在する謎の化け物屋敷「双亡亭」を巡る「スペクタクル・モダン・ホラー」。
前巻のラストから予想していたこととはいえ、主人公の一人の青年 凧葉(たこは)の活躍がかっこいい。超能力が使えるわけでも武術の達人であるわけでもないのに、ただひたすらにかっこいいところが本当にすごい。物語のスピード感もさらに増し、ジェットコースターに乗っているような気分。読んでいると、藤田和日郎先生が再び傑作を描いている(何度目なのか)、そして、読者としてその傑作の誕生に立ち会っているという不思議な感動が湧きあがってくる。
9. 樫木祐人『ハクメイとミコチ(6)』
身長10cm足らずのコロボックルで、大工のハクメイと料理(と裁縫)で身を立てるミコチの二人が森の中で暮らす日々を綴るファンタジー。『ハクメイとミコチ』の世界の素晴らしさは、何と言っても世界の解像度が高いところ。確かな画力に支えられた緻密で美しい森の描写は、読者にコロボックルの視点を与え、物語に説得力を持たせている。細部まで練られた世界観も秀逸で破綻がなく、安心して物語世界に没頭することができる。
第6巻も安定のおもしろさ。ぜひこの世界の素晴らしさを体験してほしい。アニメも放送中ですね。
10. 今市子『幻月楼奇譚(5)』
吉原の料亭『幻月楼』を舞台に、老舗味噌屋の道楽若旦那 鶴来升一郎と怪談を持ちネタにする幇間 与三郎の二人が、遊郭に纏わる不思議な出来事に巻き込まれるという幻想譚。
代表作でもある『百鬼夜行抄』と同様に、中盤までは謎が謎を呼び読者は煙に巻かれるばかりだが、最後には全てのからくりと謎が明かされてカタルシスが訪れるという構成を取る。升一郎が与三郎に恋心を抱いており、与三郎も憎からず思っているけれど、はぐらかすばかりで応えようとはしないという、少し滑稽で切ないBL要素がスパイスになっている。
近年、ストーリーが難解すぎるという声も聞くけれど、長年のファンとしてはやはり他の作家にはなかなかない魅力があるので、新刊が出れば必ず買ってしまう。カラー扉絵の美しさも素晴らしい。
11. 二ノ宮知子『七つ屋志のぶの宝石匣(6)』
『のだめカンタービレ』の二ノ宮知子の最新作で、宝石の放つオーラを感じる力を持つ質屋の娘 志のぶを主人公に、婚約者であり没落・離散した生家の謎を解くために高級ジュエリーの外商をする顕と、質屋に持ち込まれる宝石をめぐる様々な人間関係を描く。
六巻では、顕の生家の離散を巡る謎の確信に近づくとともに、志のぶと顕の関係性も変化し、仄かな恋の予兆を感じさせたりして、読者をそこはかとなくキュンとさせる手腕がさすがすぎる。
12. 赤坂アカ『かぐや様は告らせたい(8)』
高校の生徒会を舞台に、本来的には両想いの会長 白銀と副会長 かぐやが恋愛の主導権を握るために、相手に告白させようと無用な駆け引きをする模様を、神様目線で眺めてニヤニヤ楽しむ漫画の第8巻。
話が進むにつれ、二人の恋の行方のあいまにサブキャラたちの物語が語られるようになり、それがまた魅力的。シュール系ギャグでお腹がよじれるほど笑わされた直後に、キュンとするような描写を入れてくるのはもはや反則だとすら感じる。
かぐや様は告らせたい?天才たちの恋愛頭脳戦? 8 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
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13. 田村由美『ミステリと言う勿れ』
『7SEEDS』が完結した田村由美による、最新作は素人探偵もの。
一人暮らしの大学生 久能整(ととのう)は、ある日大学の同級生を被害者とする殺人事件に巻き込まれ、被疑者の一人として警察の取り調べを受けることになる……というあらすじを書くと、ヒリヒリするようなクライム・サスペンスのようだけれど、実際は安楽椅子探偵ものに近い。
事件に巻き込まれた整が、穏やかに時に的はずれにも見える質問を繰り返すうちに事件の謎が次第に解き明かされていく、その過程にカタルシスがある。 『7SEEDS』とはまた違ったテイストの作品で、田村由美の新境地になることを期待したい。今のところとても面白い。
14. 田中相『LIMBO THE KING(1)〜(3)』
『千年万年りんごの子』の田中相の最新作。
ある日突然眠りから覚めなくなり、人の記憶を食い荒らし、そのまま死に至らしめるという奇病「眠り病」は、多大なる犠牲を出しながらも8年前に撲滅された、はずだった近未来。瀕死の重傷を負った海兵のアダムは、再発した眠り病の蔓延を食い止めるために、8年前のパンデミックを救った「かつての英雄」ルネのパートナーとなり、患者の夢にダイブすることになる。
近未来SFでありながら、どこか懐かしい雰囲気を漂わせる佳作。よく練られた魅力的なキャラクターと先の見えないストーリー展開は、外国映画を見ているような気分にさせられ、三巻でもますます冴えわたっている。
15. 白井カイウ、出水ぽすか『約束のネバーランド(7)』
孤児院にて優しい寮母により本当の家族のように育てられた子どもたちは、ある日自分たちの境遇の不自然さに気付き、危険を冒してたどり着いた結論は、自分たちが "鬼" と呼ばれる偉業の生き物たちの "食糧" として育てられていることだった。 迫りくる死から逃れ、人間の世界に戻るために脱走を企てる子どもたちの旅路を描くダークミステリ。
第七巻では、ついに脱出を果たした子供たちの「外の世界でのサバイバル」が描かれる。ストーリー・画面構成ともに、これだけの密度の作品が週刊連載されていることを奇跡のように感じる。今年も引き続きの注目作。
約束のネバーランド 7 (ジャンプコミックスDIGITAL)
- 作者: 白井カイウ,出水ぽすか
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2018/01/04
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16. 梅田阿比『クジラの子らは砂上に歌う(11)』
世代宇宙船を思わせる巨大な島船 " 泥クジラ " にて砂の海を旅する人々の物語。萩尾望都を思わせる作風だけれどもう少し現代風でポップ。
人の命を食らう牢獄としての " 泥クジラ " を降り、ようやく定住の地を得たと思われた泥クジラの民をさらなる災厄が見舞う。第11巻では、第三勢力として帝国軍も現れ、また泥クジラの民たちの伝承の謎も明かされ始め、物語は佳境に入る。美しい絵柄は健在で、物語にはこれまでよりも深みを感じる。
17. ツジトモ、網本将也『GIANT KILLING(48)』
元スタープレーヤーであり、現在はJ1リーグの弱小チームである「イースト・トーキョー・ユナイテッド(ETU)」の監督を務めるタツミを主人公に、選手一人一人の成長を通してサッカーチームが強くなり、" GIANT KILLING " (巨人を倒す、すなわち格上の対戦相手を負かす)を果たす物語。
第48巻では、ついにETU所属の選手が日本代表のレギュラーメンバーに選ばれるとともに、ETU自身はこれまでなかなか勝てなかったリーグの難敵との対決を迎える。48巻にして " GIANT KILLING " としか言いようがない熱い展開が止まらない。
GIANT KILLING(46) (モーニングコミックス)
- 作者: ツジトモ,綱本将也
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18. 田村由美『7SEEDS 外伝』
先日完結した名作『7SEED』の外伝。
『7SEED』とは、巨大隕石の衝突により文明が滅亡した未来に、冷凍睡眠技術を駆使して送り込まれた若者たちのサバイバルを描く物語で、少女漫画の体裁ながら、ハリウッド映画のようない息もつかせぬ展開で、30人近い登場人物のそれぞれのドラマを丁寧に描くと言う近未来サバイバルもので、傑作なのでぜひ読んでほしい。
この作品は、その『7SEED』の外伝を謳いつつ、本編のラストシーンの後の世界を描いているので、実質的には続編ともいえる内容です。本編のような手に汗を握る展開ではなく、本編では解決しきれなかった葛藤の整理や気になっていた登場人物のその後が描かれるオプショナル的な構成。
本編を最後まで読んで感動した身としては、気になっていた部分が明かされてすっきりとしつつ、よい余韻が残る一作だった。
19. 天堂きりん『きみが心に棲みついたS(6)』
大手下着メーカーに勤務する小川今日子は、人付き合いが苦手な自分を変えるために「ふつうの恋愛」をしたいと努力する中で、漫画編集者の吉崎と運命的な出会いを果たすが、時期を同じくして、大学時代に今日子を深く傷つけた先輩の星名が職場の上司として現れる。今日子は星名を忘れようとするが、星名は今日子に執着し、再び精神的に支配すべく様々な策を弄し始める。
この作品の感想については、前回のレビューでいろいろ書いたとおりですが、とにかくサイコパス(である星名)の描写がリアルで怖ろしい。目が離せない。
20. 杉谷庄吾〔人間プラモ〕『猫村博士の宇宙旅行』
『映画大好きポンポさん』の杉谷庄吾の二作目は、近未来における宇宙旅行をテーマにしたSF。可愛らしいキャラクターとテンポのよいストーリー展開ながら、SFとしての世界観や約束事はきちんと踏襲されていて安心して読むことができる。また、SF的な難解さも必要最低限に収まっているため、普段SFに興味がない層も安心して読める娯楽作といえる。最後にきちんとオチがつく構成力もさすが。
21. コージィ城倉『チェイサー(5)』
戦後の日本を舞台に、同時代のスター漫画家である手塚治虫をライバル視しながら、少年漫画家として成功を収めていく海徳光市の物語。
実際は、架空の人物である海徳を狂言回しに、漫画家手塚治虫の波乱に満ち溢れた人生と戦後日本の世情を軽妙な語り口で描く。主題である手塚自身とは別の架空の主人公の目を通すことで、視点が入れ子構造になり(チェイサーの読者は手塚治虫の活動を海徳の視点を通して見ることになる。)、物語が説明的になりすぎず面白い。
22. 稲井カオル『うたかたダイアログ(2)』
ドラッグストアでアルバイトをするヤンキー男子高校生(お金持ちだけど放任)とマイペースな女子高校生(貧乏だけど大家族)の、なかなか進展しないもどかしい恋愛模様をニヤニヤ楽しむタイプの漫画。
二巻も一巻とほぼ同じペースで楽しめるのですが、そろそろ二人の関係に少し進展があってもよいのではと期待してしまう。
23. コナリミサト『凪のお暇(3)』
周囲の人に合わせ、過剰にいい人を演じすぎて過呼吸症候群で倒れた主人公の大島凪が、恋人と別れ、会社を辞め、安アパートに引っ越して、人生から一時離脱(お暇)して、新しい世界を垣間見るという、人生リセットコメディの第三巻。
二巻で、モラハラ系元彼とチャライ隣人の三角関係に陥った主人公の凪が、三巻では八方美人のチャライ隣人との泥沼の恋愛関係にはまってしまう展開で、個人的には前巻よりはリアルな展開でおもしろかった。
絵も上手だし、こういうの好きな人はハマるマンガだと思うのですが、わたしは相変わらず誰にも感情移入できず傍観者です。でも先は気になるので次もたぶん読みます。
ここからは、前月以前に発刊された作品の感想です。
24. 山口つばさ『ブルーピリオド(1)』
学校の勉強も友だちとの付き合いも器用にこなし、適当に生きてきた高校生の矢口八虎が初めて夢中になったもの。それは美術だった。出会ってすぐにのめり込み、美大受験に向けて全力で走りだす八虎の背を追うように、美術とは才能とは美大受験とは何なのかという、あまり知られていない美術の世界を綴る教養系漫画。
主人公とそれを取り巻く登場人物の描写が適度で、かつ、知らない世界を知る面白さを感じることができる良作。
25. 茜田千『さらば、佳き日(1)~(4)』
地方都市に引っ越してきた桂一と晃。見知らぬ土地で「新婚夫婦」としてふるまう二人には大きな秘密があった。二人が兄妹として育った日々、桂一に恋する同級生と晃の親友の少女など、それぞれに人には言えない苦しみを心に秘めた優しい人々がもがきながら自分の居場所を探して進む物語。
時系列がシャッフルされて話した展開するので、途中少し分かりにくいところがある。しかしちょうど4巻まで読むと、なぜ冒頭につながるのかがよくわかるので通して読むのにちょうどいい時期だったように思う。
不器用な晃の振る舞いがとても切ない。次巻以降は一巻の冒頭から先の物語が展開されることになると想像されるけれど、しあわせになってほしい。
26. 多田基生『やわらかな鋭角』
ゴシップ雑誌記者の渡辺は、12年前に起きた大規模なホテル火災の生き残りの少女が軟禁されているとのネタを掴み、怪しげな新興宗教の儀式に潜入する。そこで聞いたのは「どんな願いも叶えてくれる」という神様の存在と子どもの落書きのような神様の姿絵……。
潜入先の新興宗教も、信者たちの話も、そしてそれを追う渡辺の日常生活も、すべて奇妙にねじ曲がって病んでいる。それを感傷的にも感情的にもならず、淡々と客観的に描写する筆致に作者の力量を感じる。続きが非常に気になる一作。
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27. マグメル深海水族館(1)
東京湾の水深200mに作られたという、深海魚を取り扱う架空の水族館「マグメル深海水族館」を舞台とする、清掃員のアルバイトの青年 天城航太郎と深海の生物たちを巡る物語。
作者の絵がとてもうまく、緻密な描写で深海の生物の不思議な造形の魅力がひしひしと伝わってくる。監修者がついており、各話の後ろには登場した生物の紹介コラムもあって勉強になる系の漫画でもある。縦軸は主人公の成長物語になると思われるが、これはまだ始まったばかり。これからが楽しみな作品。
28. 須藤佑実『ミッドナイトブルー』
恋愛を軸にした短編集。儚くも美しい絵柄で描かれる胸を突かれるようなみずみずしい物語群。ありきたりにも感傷的にも流れず、淡々とつづられる物語はただ美しくて、ほぼ一年前の作品ですが、出会えてよかった。
29. 高橋那津子『紅い実はじけた(1)、(2)』
「昴とスーさん」の髙橋那津子の過去作で、恋が始まる瞬間を描くオムニバスストーリー。基本的には毎回登場人物が変わるので、話毎に好みが分かれるところはあるが、全体的にストレートに甘酸っぱい恋の物語が描かれている。
この時点では少し絵柄が古く感じるけれど、後半に行くにつれて洗練されて今の画風につながっているところが分かる。作家の作風が洗練されていく過程を如実に感じることができる貴重な体験をした。
30. 三秋縋、田口囁一『寿命を買い取ってもらった。一年につき、一万円で。(1)~(3)』
夢も目標もなく無気力に日々を過ごしていた青年クスノキは、生活費に困窮したことをきっかけに、不思議な店にたどりつき、一年につき一万円で寿命を売り払うことになる。余命3カ月となったクスノキは、「監視員」として現れた少女ミヤギとともに残りの日々を過ごすことになる。
小説「三日間の幸福」のコミカライズ。原作がある作品らしく、きちんと伏線の張られた物語は紆余曲折を経て、きちんと収まるところに収まる。読後感は爽やか。
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31. 増田里穂『スタンドバイミー・ラブレター』
高校生の葉月は、夏休み直前に知らない同級生から突然ラブレターを貰う。思わず断ったものの、ラブレターをきっかけにどんどん相手のことが気になって意識してしまう。告白を断ったところから始まる展開が斬新な甘酸っぱいラブストーリー。
甘酸っぱくて絵も可愛いけれど、大人が読むにはちょっと直球すぎというか、本当に恋愛のことしか描かれていなくて、最終的には想像した通りの展開で終わるあたり、物足りなさもあったりした。
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