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Anova Precision Cookerで低温調理 Vol.11 鶏肉の調理温度、塩水漬け(ブライニング)と海南鶏飯(カオマンガイ)のレシピ

 

 Anova Precision Cookerを使った低温調理の記録です。

海南鶏飯(ハイナンジーファン)またはカオマンガイとは

今回は、鶏肉を低温調理したものを使って、海南鶏飯を作りたいと思います。

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海南鶏飯は、シンガポールチキンライス、カオマンガイ(ハイナンジーファン)とも呼ばれ、香味野菜で風味付けをしたスパイシーなライスに、蒸した鶏肉とパクチーを添えて、濃口醤油や生姜だれで食べる料理。
麻布にある海南鶏飯食堂が好きなので、ここの海南鶏飯をモデルにしました。

www.route9g.com

鶏肉の調理温度について

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鶏肉を低温調理する際には、カンピロバクターに注意する必要があります。食中毒の原因菌であるだけでなく、顔面麻痺等を引き起こすギラン・バレー症候群という指定難病に移行する可能性もあるため、確実に殺菌しなければなりません。

カンピロバクターの特徴は、以下のとおりです。

  • 国内で流通する鶏肉の4~6割に付着していると見られる
  • 冷凍によっても死滅しない
  • 肉の表面だけでなく、内部にも存在する
  • 加熱により殺菌できる
※ 東京都福祉保険局「知って防ごうカンピロバクター食中毒
つまり、カンピロバクターによる食中毒を防止するためには、鶏肉の鮮度や冷凍処理の有無に関係なく、殺菌可能な温度で中心部まで加熱する必要があるということです。
では、何度で加熱すればカンピロバクターを殺菌できるのでしょうか。
厚生労働省のウェブサイトは、「中心部を75℃以上で1分間以上加熱」することを推奨しています。一方で、肉に含まれるタンパク質のうちミオシンは50度で、アクチンは65.5度で変性を始めることから、低温調理では、50度〜65度くらいの温度で長時間加熱することがセオリーです。75度だとちょっと高すぎる気がしますね。
もう少し低い温度で長時間加熱することにより、75度1分以上と同等の殺菌ができないか探してみたところ、東京都健康安全研究センターによる実験結果として、カンピロバクターについて、65度まで加熱すると30秒以内で死滅するというデータがありました。

このあたりを参考に、安全性は確保しつつ、鶏肉を低温調理していきたいと思います。

鶏肉の塩水漬け(ブライニング)

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今回は、下ごしらえとして塩水漬け(ブライニング)をします。ブライニングとは、鶏肉を調理前に塩水に一定時間漬けることにより、保水力を高めて瑞々しく調理するための下ごしらえ法です。科学的に説明すると、塩気のない鶏肉を塩水に漬けることにより、浸透圧の作用で鶏肉中に水分が取り込まれるとともに、筋肉線維が破壊されて肉質が柔らかくなるという仕組みです。

詳しく知りたい人は、「料理の科学 <1>」242頁以下か、クックパッドニュースを参照してください。

今回は、5%濃度の塩水に、筋を取り除いて二つに切った鶏もも肉を1時間ほど漬けました。

料理の科学〈1〉素朴な疑問に答えます

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海南鶏飯の作り方

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さて、海南鶏飯の作り方です。材料(2人前)は、以下のとおり。

  • 鶏もも肉       1〜2枚(ブライニングしたもの)
  • ジャスミンライス   150g
  • にんにく       1個
  • 生姜         にんにくの1.5倍ほど
  • サラダ油       大さじ1
  • パクチー       好きなだけ
  • 濃口醤油       海天醤油の老抽王。なければ、+オイスターソース

海南鶏飯に使用する米は、香りのよいジャスミンライス(タイ米)がおいしい。500gの少ないポーションで販売しているものもあるので、ぜひ一度お試しください。

ユウキ食品 ジャスミン米(香米) 500g

ユウキ食品 ジャスミン米(香米) 500g

 

 

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ブライニング済の鶏もも肉と水200ccくらいをジップロックに入れます。

ここで水を入れる意味ですが、あとでチキンエキス入りのスープを炊飯に使いたいからです。ブライニングで塩味がついているので、塩分を追加する必要はありません。むしろここの工程で若干塩抜きがされてちょうどよくなります。

保温性のよい鍋にお湯を張り、ジップロックとAnova Precision Cookerを入れ、加熱を開始します。加熱温度と時間について、わたしは68度/1時間半にしました。先ほどの東京都健康安全研究センターによる実験結果に依拠すれば、理論上は65度でも大丈夫そうなのですが、実際に65度で1時間半加熱したところ、全体的にピンク色が残る生っぽい仕上がりになりました。

好みの問題ですが、わたしはもう少し火が入っているほうがおいしそうだと思い、改めて68度で加熱したところ、ちょうどよい感じになりました。

1時間半というのは、肉の中心部まで熱が伝わるまでの時間も加味し、殺菌の基準値を超える温度で鶏肉全体を十分に加熱できる時間として少し余裕を見て設定しました。

なお、低温調理は高温での調理に比べて衛生管理が難しいため、そもそも細菌などに汚染されている可能性の高い食材(鮮度がよくないものや流通経路が不明確なもの)は使用しない、調理器具は清潔なものを使い必要に応じて熱湯消毒をすることなどを心がけてください。 

 

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ブライニングした上で、68度で1時間半、加熱した鶏もも肉。全体的にきちっと色が変わっていますが、断面はきめ細かく柔らか。みずみずしく仕上がりました。肉は一旦冷蔵庫で冷やすか、68度で保温します(食中毒の原因となる細菌の繁殖を抑制するため)。一緒に加熱した水分を取り出し、軽量カップで測っておきます。 

※ なお、鶏むね肉を使用する場合には、鶏もも肉と同じ温度で加熱するとぱさつきやすくなるように感じました。鶏むね肉の加熱については、今後改めて記事を作成する予定です。

 

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冷たいフライパンにサラダ油大さじ1を入れ、すりおろしたにんにく、塩ひとつまみを加えて中火にかけます。油の中でにんにくをゆっくりと温め、香りが立ってきたらしょうがを加え、ひと混ぜしてからジャスミンライスを加えて、全体をよく混ぜ合わせます。ジャスミンライスは研ぐ必要はありません。 

 

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ジャスミンライスをフライパンから炊飯器(うちは炊飯土鍋しかないので、土鍋です。)に移し、鶏肉の低温調理に使った水を加えます。固めが好きな方は180cc、柔らかめが好きな人は200ccくらい。わたしは200cc入れました。そのまま普通に炊きます。

炊き上がると、とにかくスパイシーでおいしそうな匂いがします。海南鶏飯の本体は、このすばらしく食欲をそそる香りのご飯なのではないか? と常々思っているところではあります。 

 

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炊き上がったご飯に、ぶつ切りにした鶏もも肉、洗って刻んだパクチーを添えれば、海南鶏飯のできあがりです。ソースは醤油だれと生姜だれ。

 

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生姜だれは、すりおろし生姜にすりおろしにんにくをほんの少しだけと、塩、酒、チキンスープを混ぜて作りました。醤油だれは、濃口醤油とオイスターソースを同量で混ぜ合わせて作ってもいいのですが、海天醤油の老抽王を使うと、特に加工しなくてもお店の味そのもの。一気に本格的なできあがりになります。

この濃口醤油は一つあると、本格的な中華料理にいろいろ使えてべんり。うちも500mlで買ってしまったので、今後、この醤油を使ったレシピを紹介したいと考えています。

 

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鶏もも肉は絶妙の火入れで、ジューシーで柔らかい!スパイシーなジャスミンライスに、 鶏もも肉を乗せて、醤油だれと生姜だれをかけるといくらでも食べられてしまう。危険なワンプレートにできあがりました。

 

低温調理に関する寄稿記事

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これまでの低温調理

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