雉肉丸々一羽分を入手
年の瀬も近づき、そう言えばやっていなかったふるさと納税。かけこみで申し込んだ返礼品が届きました。宮崎県都城市の雉肉二羽セットです。
雉肉については、「山賊ダイアリー」で見かけて気になっていたのですが、わたしが住んでいる東京ではほとんど見かけることがなく、これまで食べたことも調理したこともありませんでした。ネットで情報収集をしたところによれば、加熱しすぎると固くなるところさえ気をつければ、鶏肉よりも旨味が強く、特に雉ガラから抽出するスープが絶品とのこと。期待が高まります。
冷凍肉は、氷水解凍でドリップを抑える
今回入手した雉肉は、いわゆるジビエではなく、飼育されたものです。そして、きれいに解体されてトレーにまとめて冷凍されたものでした。雉肉初心者には非常にありがたい仕様です。
このような冷凍肉を扱うとき、うちではいつも氷水解凍をしています。手順は以下のとおり。
- 解凍対象をジップロック等の密封できる袋に入れ、できるだけ空気を抜いて真空状態にする。
- 1.を一回り大きな袋に入れて、周囲を氷水で満たす。
- 2.(解凍対象と氷水の入った袋)をボウル等に入れて、冷蔵庫に一晩入れておく。
氷水解凍は、氷水の水温がおよそ1度に保たれることを利用した解凍方法で、解凍対象の温度が上がりすぎないため、素材の状態を損なうことなく解凍が可能です。
この方法を用いるとドリップがほとんど出ず、冒頭の写真のように素材の劣化もかなり抑えられます。また、解凍中に雑菌が繁殖するおそれも少なく、衛生面でも優れています。
また、氷水に漬けた上で冷蔵庫に入れるので解凍に時間がかかりそうですが、食品の解凍は温度を1度以上に保てばよく、温度が高いほどいいわけでもないそうで、実際にやってみると想像よりはスピーディーに解凍ができます。
雉ガラでスープを作る
解凍ができたら、まず雉ガラスープを作ります。雉肉についていた解説書をベースに、雉ガラ、葱の青い部分、生姜、料理酒を用意しました。生姜は独特の風味が強いので、用途や好みにより省いてもよいです。
まず、アク抜きのために、雉ガラを熱湯にて軽く茹でます。沸騰した湯に雉ガラを入れて、再沸騰したらすぐに取り出し、湯は全部捨てます。鍋にアクがついているようであれば、きれいに洗い流しましょう。
鍋に水2リットル、料理酒100cc、アク抜きをした雉ガラ、葱、生姜を入れて、中火で熱し、沸騰寸前になったら弱火にして、グラグラ煮立たせないように2時間ほど煮出しました。
表面に少量の脂が浮いた、澄んだスープが取れます。くせは強くありません。でも、コクがすごい。濃い!この出汁で鍋や麺をやったら優勝できそうな予感がします。
下準備は、ここまで。次からは調理です。
雉酒(おきじさま)で温まる
雉料理でやってみたかったもの、それは雉酒です。「おきじさま」とも呼ばれ、新年のお祝いに振舞われるお酒だそうです。
この日の日本酒はお燗向けの七本槍。 熱めに燗をつけたお酒に、塩をふって焼いた雉肉を浸して待つこと数分。雉の濃厚なエキスが日本酒に浸みだして、より香ばしく旨みの強いお酒になります。イメージとしては、ふぐのヒレ酒をもう少しすっきりさせたような味わい。香ばしさがよいので、皮を強めに焼くことをお勧めします。
雉のたたき
二品目は、雉肉についていた解説書でお勧めされていた雉のたたき。雉の名産地では名物料理として親しまれているようです*1。
雉肉のうち、はね身ともも身を半分ずつ、塩をふってから表面を調理用のバーナーで焦げ目がつくまで炙り、炙ったものをアルミホイルに包んでから、保温したロースター(5~10分ほど空で加熱してから火を消したもの)の中に入れ、10分から15分ほど余熱で加熱します。
取り出して、薬味としてわさびと柚子胡椒を添えれば、できあがり。
表面の香ばしさに、雉肉の強い旨みと柔らかさが感じられて、ものすごくおいしいです。いくらでも食べられそう。薬味は柚子胡椒が合いました。名物になるのもうなずける味。生食できる雉が手に入ったときはぜひ試してもらいたい一品です。
焼き雉(手羽とモツ)
セットに含まれていた砂肝、ハツ、レバー(レバーのみ、下ごしらえとして予め牛乳に半日ほど漬けて、焼く前に洗い流します。)は串に刺して塩焼きに。手羽先と手羽元は、醤油、みりんと酒を混ぜたタレに半日ほど漬けてから、ロースターでこんがり焼きます。
これもまためちゃくちゃおいしい。特に手羽の香ばしさと肉の味の濃厚さが最高。肉質はちょっと固めで食べられる部分も少な目なのですが、噛めば噛むほど旨みが出てくる感じで、食べごたえありました。
雉のしゃぶしゃぶ
残りのはね身ともも身は、そぎ切りにしてしゃぶしゃぶに。雉の肉は、熱を入れると固くなりやすいので、加熱するときは薄切りにすること、そして、加熱時間は短めにすることがポイント。奥側の肉の色が濃い方がもも身、手前の薄い方がはね身です。
これは一緒に食べる野菜盛り。お皿は先日有田にて購入した弥左ヱ門窯の巻物四君子です。こういう大げさすぎない和の大皿がほしかったので、大変満足。
土鍋に雉ガラで取ったスープを張り、醤油と酒でシンプルに味つけ。煮立ったら野菜を入れてゆっくりと火を通しながら、雉肉はスープの中でさっと湯がいて、霜降りにして食べます。まさにしゃぶしゃぶ。
雉出汁はとにかく濃厚なので、ぜひ薄味で。このスープで煮ると、野菜が無限に食べられます。まさに絶品のスープ。霜降りの雉肉も、噛めば噛むほど旨味が溢れてきます。上品で癖は強くないのですが、滋味に富んだ味わいです。
しゃぶしゃぶとお野菜を一通り楽しんだあとの〆は、雑炊で。残ったスープの中にご飯を投入してほぐし、溶き卵を注いだら、蓋をして火を止めて待つこと5分。とろっとろの半熟卵が絶品スープを吸ったご飯と絡んで、満腹でもついつい食べてしまいます。
雉うどん 、雉天と雉の照り焼き
さて、翌日のお昼も残りの雉を使って、雉尽くし。
雉スープをベースにした雉うどんを作りました。スープには、醤油、みりんと酒を入れて、ちょっと甘めの味付けに。雉肉は入っておらず、具は野菜のみですが、全く不足を感じない濃厚さ。スープのおいしさでうどんをぺろりと食べられます。
ささみは、鶏と同じで淡泊な味わい。脂分を補うために、天ぷらにしました。これは正解だったかも。もも身とはね身は照り焼きに。もも身のほうは加熱してもジューシーさが残っていましたが、はね身のほうは鶏肉のむね肉に近い雰囲気で、少しパサついてしまいました。それでも旨みは強いので、これはこれでおいしかった。
まとめ
という感じで、今回は雉一羽を丸々堪能してみました。結論としては、鶏肉よりは調理に手間がかかるけれど、すごくおいしいので、シーズン中にチャンスがあれば、ぜひ一度お試し頂きたい。
うちにももう一羽分残っているので、冬の間にもう一度雉鍋をやりたいと思います。
季節の味を堪能するシリーズ
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*1:なお、今回は飼育された雉を使用し、生産者からもたたきを推奨されているため、問題ないと考えていますが、ジビエを使う場合には生食により食中毒の危険がある可能性がありますので、個別に生食の可否を確認して下さい。