豚肉の低温調理について
Anovaを使った豚肉の低温調理については、これまで何度か試みて記事も書いてきたところなのですが、最近検索で読んで頂くことも多いようなので、改めて豚肉のベーシックな低温調理を検証しつつ、実施してみたので、記録します。
今回の豚肉ラインナップ
今回は、近所のスーパーで購入できる範囲で、三種類の部位の豚肉を用意しました。いずれも国産です。左側が、豚肩ロース肉、右上は豚ヒレ肉、右下は豚もも肉。どれも300gくらいでした。
豚肩ロース肉。肩肉とロース肉の間の肉で、固めの赤身の間に脂身が網目状に広がっている部位です。うちではよくチャーシューにします。
この部位には、コラーゲン(かたい線維状のたんぱく質)が多く含まれるため、中途半端に加熱すると固くなってしまいます。そのため、低温で長時間加熱することにより、旨みをできるだけ内部に留めたままコラーゲンを分解してゼラチン化して、柔らかく仕上げたいところです。
豚ヒレ肉。豚肉の中では希少な部位で、脂肪分が少なくキメが細かくて柔らかいのが特徴です。味わいは淡泊で、低温でも加熱しすぎるとパサついてしまうので、必要最低限の加熱時間で水分量を減らさないよう工夫をしながら調理したいところ。
豚もも肉。足の付け根なので、筋肉の塊的な赤身肉で脂肪分は少なめ。ボンレスハム等の材料です。こちらも加熱しすぎるとパサついてしまうので、水分量を減らさないように工夫して調理していきます。
豚もも肉のバター醤油ソテー
まずは、豚もも肉を低温調理したあと、ソテーにします。パサつきを抑えるため、初めに塩水漬け(ブライニング)して水分を補充しました。
今回は、5%濃度の塩水(砂糖を少々加えました)に、風味づけのローリエ(月桂樹)とローズマリーを加えた液に漬けてジップロックに入れ、一晩寝かせています。
buchineko-okawari.hatenablog.com
一晩塩水に漬けた豚肉は、液を捨てて軽く水で流し、新しいジップロックに少量(100ccほど)の水・ハーブとともに入れて、Anovaをセットして63度で4時間加熱しました。塩水漬けを経ているので、ここで塩分は追加しません。
63度というのは、厚生労働省が豚肉を販売する際の加熱殺菌の基準を「
また、4時間としたのは、中心部が63度に至ってから確実に30分間維持できるように用心してちょっと長めに設定しています。なお、豚もも肉については、パサつきを防ぐため、あまり長く加熱しすぎないほうがよいのではないかと個人的には考えています。
低温での加熱を行う場合、高温で加熱するよりも細菌が繁殖しやすいため、使い捨てのビニール手袋等を使用し、使う器具も熱湯消毒を励行しましょう。
加熱が完了したもの。この段階でハーブは取り除きます。
表面をコーティングして水分の蒸発を抑えつつ、コクと油分を追加するために、無塩バターを溶かした鉄フライパンにて、中火でゆっくりソテーしていきます。
なお、手前の色鮮やかなキノコは、タモギ茸。フレンチやイタリアンでよく使われるキノコだそうで、生のときは独特のにおいがするのですが、加熱すると食欲をそそる香りに変化します。これも肉とバターの旨みを吸わせるように一緒にソテーします。
強火にするとバターが焦げて風味が悪くなるので、弱火から中火で転がしながら丁寧に加熱し、表面に香ばしい焼き目がつけばできあがり。
豚もも肉を取り出して、厚めにカットします。断面です。表面から透明な肉汁がじんわりと溢れてきて、ガッツポーズしたくなるようなジューシーさに仕上がりました。
タモギ茸を取り除いたフライパンは、弱火にかけたまま醤油をじゅわっと加えて混ぜて、バター醤油ソースを作りました。
温めたお皿に、厚切りにした豚もも肉、ソテーしたタモギ茸と別にロースターで焼いておいた長ネギを添えて、胡椒を挽いて醤油バターソースをかけたらできあがり。なお、長ネギは失敗したのではなくて、一番外側を焦げるまで焼いて、中のトロトロ部分を楽しむ調理法です。
工夫した甲斐があり、豚もも肉をめちゃめちゃ柔らかくジューシーに仕上げることができて、バター醤油ソースも簡単でおいしくて、大変満足でした。
豚肩ロースと豚ヒレ肉の食べ比べ
次は、豚ヒレ肉です。こちらも同じく予め水分量を補うために塩水漬け(ブライニング)しました。豚もも肉と同じ要領ですが、こちらは和風にしたかったので、ハーブは入れていません。
一方、豚肩ロース肉は、コラーゲンをゼラチン化させることにより柔らかくする路線なので、ブライニングはなし、重量の0.8%の塩をもみ込んで一晩置きました。
加熱温度については、豚もも肉と同じく63度。
加熱時間は、豚ヒレ肉については豚もも肉と同じく、長時間加熱しすぎるとパサついたり固くなる懸念があるため、4時間としました。さらに、加熱した後に急冷してから冷蔵庫で半日ほど寝かせました。経験上、豚ヒレ肉は加熱後すぐ食べるよりも少し寝かせたほうがしっとりして食感がよくなります。
一方、豚肩ロース肉については、多く含まれているコラーゲンをゼラチン化させるために、12時間加熱しました。感覚としては8時間~でコラーゲン化は結構進むので、他の予定との兼ね合いで長めに加熱された感じもあります。
加熱した後、半日ほど落ち着かせた豚ヒレ肉です。全体的にきれいなピンク色できめの細かい断面になりました。
加熱が終わった豚肩ロース肉。こちらも均一にきれいに火が入って、ジューシーな仕上がりです。
まずは、シンプルに薄めにスライスして食べ比べです。ソースは、左がわさび醤油用の醤油、右は自家製の醤油麹です。
buchineko-okawari.hatenablog.com
豚ヒレ肉ですが、しっとりキメが細かくてハムっぽい。工夫した甲斐があり、パサつきはゼロ、ジューシーでした。
わさびと醤油麹を乗せて食べると、お酒のつまみになる感じ。
豚肩ロース肉は、コクがありつつ弾力のある肉がきちんとコラーゲン化して、解けるような蕩けるような食感でした。
こちらは肉自体にパンチがある分、他のもの(蟹)用に用意していた酢醤油が合いました。
あと、最近新たに導入したフリーズドライの醤油とわさびで食べてみたりもしました。フリーズドライの醤油は、味自体にはそれほど特徴はないのですが、カリカリした食感がおもしろかったです。
さらに、残りは厚めに切って、鉄フライパンにて表面をソテーしました。わたしは低温調理豚はこうしてソテーして食べるのが一番好きかも。
生肉からソテーする場合との違いは、やはり肉自体の食感。
肩ロース肉のように短時間加熱では固くなりやすい部位については、予め低温調理することにより肉の内部を最適な柔らかさにできるので、これに表面の香ばしさが加わって最強となります。
一方、豚ヒレ肉やもも肉のように加熱しすぎるとパサつく部位については、予め低温調理することにより焼きすぎを防ぎつつ、加熱時間や温度のコントロール、加熱前後の下ごしらえにより、パサつきのないジューシーな仕上がりを安定して作り出すことができます。
いずれにせよ、少々手間はかかりますが、低温調理して厚切りにした豚肉の表面を香ばしく焼くのは最高という結論なのです。
今回は、普通に塩で食べる以外に、卵黄と醤油麹を混ぜたソースを付けてみたりもしました。つくねを卵黄で食べるみたいなイメージで、なかなかおいしかった。簡単に作れるソースのバリエーションとしてストック。
低温調理の寄稿記事
その他の低温調理記事
buchineko-okawari.hatenablog.com
buchineko-okawari.hatenablog.com
buchineko-okawari.hatenablog.com
buchineko-okawari.hatenablog.com
buchineko-okawari.hatenablog.com
buchineko-okawari.hatenablog.com
buchineko-okawari.hatenablog.com
buchineko-okawari.hatenablog.com
buchineko-okawari.hatenablog.com
buchineko-okawari.hatenablog.com
buchineko-okawari.hatenablog.com
buchineko-okawari.hatenablog.com
buchineko-okawari.hatenablog.com
buchineko-okawari.hatenablog.com